お前二度と車運転するなよ ページ29
.
______萩原と夜中に話をした日から数日。相変わらず僕は「妹さんを僕にください」コールを聞いてはバッサバッサ切り捨て、不機嫌なまま校内を歩いていたのだが、そこに外出中のヒロから電話がかかって来た。
あまり電話をかけて来ないヒロからの電話。何かあったのかもしれないと思いながら応答すれば、萩原も同じことを考えたのか、静かに携帯に耳を寄せてきた。二人してヒロの次の言葉を待つ。
要件を簡単に纏めれば、トラックにバンパーが引っかかって制御不能になっている車がいる、このままだと大事故になるから教官か誰かに車で来てほしい、というものだった。
「教官の車なら近くに陣平ちゃんが居るはず。あいつ今日教官に車の整備頼まれてたから」
「なるほどな。ヒロ、僕たちもすぐにそっちへ向かう。それまでそこを頼んだ」
《あぁ、分かった。気をつけろよ》
普通なら教官に事情を説明して車を出してもらう方がいいのだが、生憎そこまで時間的猶予は無さそうだ。在学中の運転は禁止とする決まりを一瞬だけ思い出し、すぐに頭の外へ追い払う。
これは人命がかかっている。決まりに足止めされるわけにはいかない。
萩原の助言により松田が居るであろう駐車場に向かえば、あいつは呑気にも教官の車であるFDの荷台で爆睡していた。思わず奴を蹴落としてしまったのは不可抗力と言うか何というか。すまん、怒りに抗えなかったんだ。
今日もまた初日のように掴み合っている俺達の間に、「そんなことしてる時間無いだろ!」と萩原が割り込んでくる。
確かに今回に関しては正論だ。松田もその言葉で何かまずい事態になっていることを察したらしく、両者ともお互いの胸ぐらを掴んでいた手を即座に離した。
「陣平ちゃんもどう?研二くんとの危険なド・ラ・イ・ブ♡」
「おーそうだな。お供させてもらうわ。おいゼロ、お前もさっさと後部座席乗れ」
「なんでお前がしれっと助手席に……まぁいい。運転は頼んだぞ、萩原」
「合点承知の助〜!」
お前それもう古くないか、と言いかけた僕の言葉を遮るように、萩原は慣れた手つきでエンジンをかけ、猛スピードで車を急発進させていく。それに松田はテンション爆上がりなようだが、普通の人間はこんな運転されたらテンション爆下がりなんだよ。お前ら普段どんな運転してたんだ。頭イカれているのか。
窓の上のアシストグリップに捕まったまま、前席に座る男共に胸中でそんな悪態をつく。
頼むから、目的地に着くまでの道で交通課に止められるなよ。
.
868人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひなみ - 読み終わった後、偶然、コナンのEDにもなった「ジューンブライド〜あなたしか見えない〜」を聴いたんですが、この曲の歌詞が妙にこの作品に合っている気がして、またこの作品を思い出して泣いてしまいました。心に残る素敵な作品をありがとうございました。 (2022年10月16日 17時) (レス) id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった今も涙が止まりません…。まず二人が助からないと分かったところで大号泣、夢主が既に亡くなっていたと分かったところで大号泣、最後の写真で大号泣…。ずっとギャグだったから、こんな結末全く予測していませんでした…。 (2022年10月16日 15時) (レス) @page49 id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最後のイラストで涙が止まらなくなりました😭 (2022年6月23日 22時) (レス) id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まさかの結末で涙が止まらない、、、 (2022年6月14日 19時) (レス) @page48 id: 2eb7e133f7 (このIDを非表示/違反報告)
milk - なにこれ、悲し過ぎない!もうtシャツの袖がびしょ濡れになりました (2022年5月26日 0時) (レス) id: b9832e8e21 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:無糖 | 作成日時:2021年7月25日 15時