彼女に紹介されたお兄さんが同期だった場合の対処法【萩原研二】

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他にも、合コン会場までの道のりで困っていたお婆さん(実際はお爺さんだったが)を助けたり、父親の件で悩んでいた班長の背中を押したり、女子にぐいぐい来られた時はしっかりと一線を引いたり。
ヒロの言う通り、その行動の数々は、萩原が誠実な男だと証明するには十分すぎるものだった。






「いつかはちゃんと萩原と向き合ってやってほしい」






……萩原が諦めるのが先か、こちら側が折れるのが先か。

後者であってくれれば良いと心のどこかで願ってしまっているのは、やはり僕が妹に甘いからか。
後者を願っていながら、いまだ手を離す決意の固まっていない自分の中途半端さを嘲笑うように、足元にそっと笑みを溢した。







「＿＿＿萩原？」







その日の晩。消灯時間が過ぎてもなんとなく寝付けず、何か飲み物でもと夜の廊下を歩いていれば、前方の曲がり角にぼんやりとした明かりを見つけた。
警備員か？この警察学校に不審者は流石に居ないよな、なんて想像を巡らせながらも、気配を消して素早く対象に近寄り、死角を覗き込む。


だがそこに居たのは、警備員でも不審者でもなく、携帯画面を柔らかな眼差しで見つめる萩原だった。
思わず声に出してしまった僕に萩原は慌てたように携帯を隠そうとして、しかしそれが仇となり、僕の足元に彼の携帯が飛んでくる。なんだ、僕に見られたらまずいものでもあるのか。






「…………これは」

「……はぁ、だから降谷ちゃんには見られたくなかったんだよ。夜中に妹の写真眺めてニヤニヤしてる男とかキモいでしょ、普通に」







「はぁ、また振り出しじゃん」と言って顔を両手で覆う萩原。その様子に一度目をやって、すぐにまた手元に視線を落とす。

……彼の携帯に写っていたのは、Aと萩原が肩を寄せ合って笑っている写真だった。







「…………僕には、お前の考えが分からない」

「え？俺比較的分かりやすい性格してると思うけど」



「＿＿＿＿＿何故そこまでして、僕からの承諾を得ようとするんだ」







語気を強めて言った言葉に、萩原は口を閉ざした。その気配を感じ取って、拾い上げた奴の携帯を握りしめる。


……僕からの承諾が無くとも、交際は勿論、その先の結婚だって彼らは勝手に出来る筈だ。証人欄なんて成人済みで互いの結婚の意志を証明出来れば、友人でも上司でも誰にだってなれる。
なにも僕まで納得させる必要など端からない。どう見たって承諾する意思のない兄など、最初から素通りしていけば良いじゃないか。



なのに、何故。







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