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「それに、あの子、生まれつき耳が聞こえないだろ?だから、ゼロも余計にな」








俺の予想を肯定するように、諸伏ちゃんがそう付け加える。
まぁ、一番はそれだろうな。俺ももし下に耳の聞こえない兄弟が居たら、親が呆れるほどの過保護になる自信がある。


彼の言葉を受けて、なんとはなしに、自分の両手に目を落とす。

この手で、この指で。Aちゃんと距離を近づける為に、高校の時の自分が覚えた、会話には不自由しない程度の手話。
思えば俺が一人の女の子にあそこまで拘ったのは、あの時が初めてだった。



いつもの俺は、他の子とほどよく仲良くして、ほどよく距離を保って、そうして自分の生活に不自由しないよう、周りを固めて。
処世術と言われればそうなのだが、きっとそんな賢いものじゃない。

ただ、一人になりたくなかった。それだけ。








「……俺の今後の勝率、率直にどう思うよ、諸伏ちゃん」

「俺にそれを聞かれてもな」








ですよねー。

単身で降谷ちゃんが居るところに飛び込んでいく勇気もなく、うだうだとパラソルの下で時間を潰す。その内陣平ちゃんが俺を呼びに来てくれるときを待とう。来て……くれるよな?

割と降谷ちゃん側についている親友に一抹の不安を抱いていると、諸伏ちゃんが何かを思い出したかのように、「あぁ、でも」と言葉を続けた。
なんだなんだ。このタイミングでの「でも」はあんま良い予感しねぇよ諸伏ちゃん。







「一個、ゼロが素直に感心してた」

「……え、マジ?マジで言ってる?そこまで期待させといて気のせいは流石に俺に酷よ??」

「いや、あいつ自身が言ってたから、気のせいではないと思う。ちゃんと手話を覚えているところは見直したって、相変わらず顰めっ面だったけど言ってたぞ」







諸伏ちゃんに信じられないことを聞かされて、取り敢えず一回自分の頬を殴る。我ながらくそ痛い。

だけどこれで夢でないことは分かった。
マジかよ、降谷ちゃんそこんとこもちゃんと見てくれてんの。確かに何回か手話で会話してたけど、正直俺お兄様(笑)がいつ殺しにかかってくるか気がかりすぎて、殆どあの日のこと覚えてないんだけど。殆ど無意識だった。



でも、そうか。見直した……。







「てことはワンチャン行けんのでは俺?!?」


「おうそうだな。頑張れ」




「降谷ちゃーん!!!俺も混ぜてー!!!!」







数分前の情けない気持ちはどこへ行ったのか。上がるテンションと共に海へ駆け出していけば、真っ先に気づいた降谷ちゃんに「は?」と言われた。なんでだよ。







ロマンチストでもないし→←□



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ひなみ - 読み終わった後、偶然、コナンのEDにもなった「ジューンブライド〜あなたしか見えない〜」を聴いたんですが、この曲の歌詞が妙にこの作品に合っている気がして、またこの作品を思い出して泣いてしまいました。心に残る素敵な作品をありがとうございました。 (2022年10月16日 17時) (レス) id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった今も涙が止まりません…。まず二人が助からないと分かったところで大号泣、夢主が既に亡くなっていたと分かったところで大号泣、最後の写真で大号泣…。ずっとギャグだったから、こんな結末全く予測していませんでした…。 (2022年10月16日 15時) (レス) @page49 id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最後のイラストで涙が止まらなくなりました😭 (2022年6月23日 22時) (レス) id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まさかの結末で涙が止まらない、、、 (2022年6月14日 19時) (レス) @page48 id: 2eb7e133f7 (このIDを非表示/違反報告)
milk - なにこれ、悲し過ぎない!もうtシャツの袖がびしょ濡れになりました (2022年5月26日 0時) (レス) id: b9832e8e21 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2021年7月25日 15時

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