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ページ15









「俺、隣の、クラスの、松田、陣平。そっちは?」


「!……【初めまして、私は降谷Aです。】」






今日あった自己紹介と同じページが開かれる。自己紹介用の文面だからか若干言い回しが堅い。
けれどその次の文面は今考えたものなようで、新たにまっさらなページを開くと、彼女はそこにペンを走らせ始めた。

なんとなく手元を覗き込むのも憚られて出来た、謎の空白の時間。
手持ちぶさたで隣の陣平ちゃんを見れば、今がチャンスとばかりに彼の腕が首に回され、彼女に背中を向ける形となる。なんだなんだ、別に声なんか抑える必要ないと思うんだけど。






「で、結局どっちだよ。これなのか?」

「ちげーって。だったら今頃陣平ちゃんに「今日彼女と帰るから先帰ってて〜♡」とか送ってるわ」

「だよな。お前の雰囲気もいつもとちげぇし」

「えぇ?どこが?いつも通りっしょ」






ケラケラと笑う俺に対し、珍しく真面目な表情を浮かべる陣平ちゃん。
その横顔が纏う空気は、なんだか軽く茶化せるようなものでもなくて、大人しく彼の言葉を待った。







「…………いや、なんか、」







___素のお前だなって。


その言葉の意味を聞く前に、陣平ちゃんは背後でとっくに書き終わっていた降谷さんに気づいて、体勢を元に戻す。
俺も一テンポ遅れて体を戻せば、【萩原さんのお友達ですか?】と書かれたスケッチブックを顔の前に立てている降谷さんが、こてんと首を傾げていた。







「お前萩原さんとか呼ばれてんのか。いつもだったら「研二くんって呼んでね♡」とか言ってるくせによ」


「待って陣平ちゃんがする俺のモノマネめっちゃキツいんだけど」

「因みに再現度99%な」

「ウッソ。ちょっと自分見直すわ」







思わず普段通りの喋りをしてしまって、隣の彼女の存在を思い出す。慌てて会話を止めるが、このテンポじゃ絶対に聞き取れてないよな、降谷さん。
置いてけぼりにしてしまったことを申し訳なく思っていると、そんな俺の思いなど露知らず、彼女はニコニコと楽しげに笑っていた。

てっきり困惑しているのかと。予想外の反応に二人して降谷さんを見つめていれば、じっと見つめられてようやく気づいたのか、彼女の手によって【萩原さんのお友達ですか?】の下に文字が綴られた。







「【楽しそうな音ですね】」







その文面に「え、分かるの?」と返せば、彼女はどこか言いにくそうに微笑んで。







「【私、昔から、音の色が見えるんです】」







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うな - 陣平ちゃんが最後らへんで言っていた、2人の結婚式は呼ぶって言ってたのに的な話のとこで止まりかけてた涙が一気に溢れてきました。萩も大怪我なのに最後まで彼女ちゃんを守ろうとしている所がもう…😭最後の写真もすごく素敵だし、大泣しました。大好きです。 (5月6日 15時) (レス) @page49 id: c7c459b30e (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった後、偶然、コナンのEDにもなった「ジューンブライド〜あなたしか見えない〜」を聴いたんですが、この曲の歌詞が妙にこの作品に合っている気がして、またこの作品を思い出して泣いてしまいました。心に残る素敵な作品をありがとうございました。 (2022年10月16日 17時) (レス) id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった今も涙が止まりません…。まず二人が助からないと分かったところで大号泣、夢主が既に亡くなっていたと分かったところで大号泣、最後の写真で大号泣…。ずっとギャグだったから、こんな結末全く予測していませんでした…。 (2022年10月16日 15時) (レス) @page49 id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最後のイラストで涙が止まらなくなりました😭 (2022年6月23日 22時) (レス) id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まさかの結末で涙が止まらない、、、 (2022年6月14日 19時) (レス) @page48 id: 2eb7e133f7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:無糖 | 作成日時:2021年7月25日 15時

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