Irreversible《 ytym 》 Ⅱ (ページ3)

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‥

声をかけるとゆっくりとこちらを見た。
こんな所にいて、俺の車だと気付いているんだ。もう全部わかっているんだろう。

「お前が外に出掛けるようになってから怪しいと思ってた」

「じゃあ、…結構前からだね、」

「…裕翔。お前が最近一緒にいるのは…」

つっかえるように言葉を詰まらせた。

分かるよ、受け入れたくないよね。自分の息子がオメガと一緒にいるなんて。付き合ってるなんて。
小さい時から、アルファの女性と結婚しろと言われてきたんだから。

オメガの男性、父さんの理想とは全部真逆だ。

「あのバイトくんだよ、オメガの」

「……」

「…父さんが反対するだろうとは思ってた。だから隠してたんだ」

「それなら、」

「でも俺、別れる気一切ないから」

今まで、父さんの言うことは全て正しいと思って生きてきた。父さんがやれと言うことはやってきたし、やめろと言われたものはいくら好きでも諦めた。

でも、やまだけは、
やまだけは、手放したくない。

手放せない。

「父さんのこと、納得させてみせる
だから、お願いだから、やまには何もしないで」

「……仕事が残ってるんだ。俺は帰る」

「…うん、俺も帰ったらすぐ仕事終わらせるよ」

近くに止めてあった車から運転手が降りてくる。
その車に乗って、父さんは去っていった。

「……大丈夫、大丈夫だ」

そう自分を洗脳するように呟いてから、やまの部屋に戻った。

戻ってから数分後、やまが目を覚ました。

まだ少しヒートの余韻があるようで、目はとろんとしているし、声も少し甘い感じ。

「おはよ、…体は痛くない？」

「ん、…平気、」

「良かった。疲れたでしょ、寝てていいよ」

「……」

やまが、俺の目をじーっと見つめる。
正直、ふわりと匂いを感じながらのそれはキツイんだけど、必死に堪えて俺も見つめ返す。

「どうしたの？」

「やさしかった、から」

「ん？」

「ゆうと、優しくて、嬉しかった」

普段の少しクールな雰囲気はなくて、やま全体を優しい穏やかなオーラが包み込んでいる。
やまの目尻に少し涙を溜まっていることに気付いて、指でそれを拭う。

やまはきっと、繊細で、まるでガラスみたいな人なんだろう。ずっと1人で、毎日を必死に生きてきたんだろう。

初めて会った時と何も変わらない、
守りたいというこの感情。

またふわりと微笑んだやまが可愛くて、
無意識に、抱きしめた。

‥