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「え?隆二いなかったんですか?」


珍しく遅刻ギリギリの時間に事務所入りした俺の耳に入ってきたのは酷く慌てたたくさんの声。

おっと、自己紹介がおくれたわ。

みんな、俺やでっ!?

え?……俺やでって言われても分からないって?
そんな悲しいこと言わんといて。

そう俺、
みんなのアイドル、

山下健二郎ですっ!てへっ



って、そんなことはどーでもええねん。

俺が事務所入りするとたくさんのスタッフさん達がザワザワ、バタバタ。

そしてその中心にはオロオロする一人の男。
それは俺たちのボーカル様。
俺みたいに自称やなくて、
ほんまもん、

みんなのアイドル登坂広臣。

今日は確か……、ボーカルは午前中からレコーディングやなかったかなぁ。

今俺のスマホは13:00、ってなってるけど。


「おはようおみちゃん、どーし…」
「あ、健二郎くん……」

ザワザワなスタッフさんの中をかき分けた俺の言葉を遮ったおみちゃんが真っ青な顔で俺の腕を握った。

「隆二が朝から音信不通で……」

そう言いながらオロオロとしていてもやっぱりイケメンやなぁ……

じゃなくて。

「電話しても出ねぇし、マネージャーが家まで行ってくれたんだけどいなかったらしくて……
こんなこと初めてで……、
健二郎くんどうしよう……もしかして誘拐とかされてたり……ほらあいつ可愛いから!」

って、髭面のコワモテとっ捕まえて可愛いってなんやねん!

ってツッコミは喉元につっかえたまま出てこない。

だって、臣ちゃんの顔……めっちゃ真剣やん。

「いたっ、ちょ腕痛いわ!」

握られた腕もめっちゃ力入って痛いし、
なんや、茶化してる場合やないって俺でも気付くわアホ。

「とりあえず落ち着き。ほら、そこ座ろ?な?」

優しく背中をさすりながら廊下の椅子に座らせると、バタバタと足音が近付いてきた。
それはスタッフさんの一人だった。

「今市さん、見つかりました!!」

はっと顔を上げる臣ちゃんにそのスタッフさんは少し気まずそうな顔をして、そして言葉を続ける。

「……ですが、今マネージャーさんと病院に……」

「りゅ…じ……病…院…………?」

腰を抜かしたかのようにガクンと臣ちゃんの身体の力が抜けて、俺は咄嗟にその身体を受け止める。

「ちょ、病院って……隆二どないしたん?!」

俺もいよいよ口調が強くなって目の前のスタッフさんが涙目になってしまった。



「と、とりあえずお二人とも病院、行ってください!!」

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作者名:kyle | 作成日時:2018年3月11日 11時

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