唇とマーマレード 6

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そんな話をしているうちに、昼休みは終わってしまい。

買ったままのサンドイッチを袋に戻しては、また私達は社内に戻る。

太輔は、瑠璃子さんの妊娠のことなんか無視しろって言うけどさ。

無視できる問題じゃないでしょ。

研究室のドアを開けた途端、室内の雰囲気がおかしいことに気付いた。

太輔もそれに気づいたらしく、

「何かあった？」

そう訊ねたら千賀くんは、黙って私達を休憩室へ連行した。









「さっき社長のお母さんだっていう人がここに来て、Aさんのことを探してた
若い女の人を所長に紹介してたんだけど
多分その人、瑠璃子さんだと思う」

私と太輔は、無言で顔を見合わせる。

このことは、若葉伝いに千賀くんもよく知ってることだし。

「今、社長室に行ってるみたいだけど」

とうとうお義母様が動き出したみたいだ。

瑠璃子さんの妊娠をきっかけに、私に引導を渡しに来たんだ。

「A、どうする？
社長室に乗り込んできたら？」

太輔は何故か、私を煽るようなことを言ってくる。

「乗り込むの？私が？」

「じゃないと、そのうちまた研究室に乗り込んでくると思うけど」

…確かに。









そんな時に休憩室に入って来た所長は、私を見つけては溜息をついて見せる。

「お前の姑さん？何とかしてくれよ」

そんなことを言いながらテーブルにつくと、食べそびれたらしいお弁当を広げ始めた。

「なんか言ってました？お義母様」

「Aをクビにしろって
婚約者がいる社長を強引にAが奪い取って結婚したから、婚約者が精神を病んだとか
社長は嫌々Aと結婚して、婚約者との間に子どもができたから、離婚させたいとか
頭おかしいだろ、あの姑」

言いたい放題の所長は、お弁当を頬張りながら延々と愚痴り始める。

「Aと社長が仲睦まじいのは、社内で見てる俺らが一番よく知ってるし
何言ってんだ？このババアって感じだったんだけど
本社の人間だからって我慢して聞いてやっただけ
Aをクビにするつもりもないし、そんな権限も俺にはない
だけど、ちゃんと話し合っといた方がいいんじゃない？
婚約者も病んでる風だったけど、姑も病んでる風だったけど」

所長がそう言ったタイミングで、カチャリと遠慮がちに休憩室のドアが開けられた。

「Aさん、社長のお母さんと社長の婚約者だって人が来てますけど…」

…どうやら、勝手に決戦は始まってしまうみたいだ。

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