唇とマーマレード 6

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「今までは、こちら側の都合で婚約破棄することになったから、申し訳ないと思って我慢してた部分はあるけど
さすがにやり過ぎだと思うから
きちんとここで終わりにしておかないと、今後、もっとエスカレートするんじゃないかと思って」

そっか…、ちゃんと腹を立ててたんだ。

正直、瑠璃子さんの妊娠事件からの彼は、好きじゃなかった。

だって別人みたいに思えたから。

自分の感情を見せてくれなかったし、そういうので私は不安だったのかもしれない。

「これから、大変になると思うけど
ちゃんとAのフォローもするし、もう少しだけ我慢してくれたらありがたいんだけど」

さっきまで全然こちらを見てくれなかったのに、ようやく彼は私の目を見て、そう告げてくれた。

その瞬間、今まで少しだけ他人に思えてた彼のことが、ようやくいつもの彼に見えてくるようになった。









隣にいる彼の肩先に頭を乗せて、わざと体重をかけてみる。

「なんかもう…、私はどうでもいいや」

「どうでもいいって？」

「もうこの家の外で何が起こってても、私にはどうでもいいと思うことにした
私達だけのことしか考えないことにする」

もう他人のことを心配したり、人の目を気にしたりするのはやめた。

ここまでの思考にたどり着くには、結構時間がかかったけど。

なのに彼は真顔でこう言ってのけた。

「俺はずっとそのつもりだったけど
Aと自分以外のことは本気でどうでもいいし、興味すらない」

その顔を見ていたら、不意に笑いがこみ上げてきた。

本当にそう思ってたんだろうな、真面目な彼のことだから。

急に吹き出した私を見て、彼は安心した面持ちになるくせに、何故かその後泣きそうな顔をする。

「やっとAが笑ってくれた」









「A、ごめん
ずっとAのことを幸せにしたいって思ってるのに
願いとは逆に、苦労ばかりかけてるような気がする」

毎日のように、彼は「ごめん」と告げる。

もう聞き飽きたよ。

やんわりと肩を抱いてきた彼は、またひとつ、禁断の言葉を口にした。

「もう、本気で子どもを作らない？」









「…本気って、どういう意味？」

「きちんと基礎体温を計って、排卵日を狙うみたいな」

…待って。

それって、ガチなやつじゃん！！！

私的に、子どもは自然に授かるのが理想なんですけど！

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