唇とマーマレード 5

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「今度こそ、これがハネムーンなんだよね？」

私達は一体、何回ハネムーンに出かけたことになるんだろう。

いろいろあったけど、今が一番幸せのような気もする。









翌朝は酷い雨で、私は窓越しに濡れそぼったパークを恨めしく眺めていた。

昨日と同じく、朝食をルームサービスで運んで来てもらうけど、テラスには出ることができない。

窓越しにテーブルをセットしてまた、恨めしそうにパークを眺める。

「A、このホテル、プールがついてるみたいなんだけど」

「知ってるよ
でも、水着なんて持ってきてないもん」

「水着も受付で売ってるって」

…何ですって！？

そんなの…、もう入るしかないじゃん！

窓越しにもう一度、パークを覗いてみる。

色とりどりのポンチョを着た人々が、パークに散らばっているのを見て、私はすぐに決意した。

「プールに行く！」









まるで古代ローマの宮殿のようなプールには、最初は家族連れが何組かいたものの、

お昼過ぎになると、誰もいなくなった。

どうやら雨は上がったみたいだ。

「パークに戻らなくていいわけ？」

ジャグジーでのんびりしている彼は、そんなことを言ってくれるけど。

今日は一日中、ここで遊んでいたい気分なんだ。

どうやら当分ここは、貸切状態みたいだし。









さっきから私一人がプールで遊んでる状態で、彼はプールサイドバーで何か飲んでたり、ジャクジーでのんびりしたりと、珍しく別々で寛いでいた。

最近の彼は私に合わせてくれるばかりだったから、こういう過ごし方も悪くないと思う。

近くにいながら、お互いに違うことを楽しんでる、みたいな。

「A、おなかすいたんじゃない？」

プールの真ん中で仰向けに浮かんでいる私に、プールサイドから彼が話しかけてくる。

「サンドイッチを買ったから、少し休憩したら？」









プールサイドで、遅い昼食をとりながら、

「渉さんは楽しい？」

不意にそんなことを聞きたくなった。

「楽しいというより、リラックスしてる
自由だし、時間に縛られない感じが」

なるほど。

彼には、こういう休息が必要なのかもしれない。

何も予定を決めないで、おなかがすいたら食べて、その時やりたいことをする、みたいな休息が。

決めた！

次の旅行先は、リゾートにしよう。

何もせずに過ごせるような、退屈で自由な場所に。

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