唇とマーマレード 5

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「じゃあ、もう寝る？」

彼の口調は至っていつも通りで、この後は何もせずただ寝るだけ、みたいな雰囲気を醸し出してくる。

だから私も知らん顔して、

「いいよ」

とか余裕ぶって、その誘いに乗ってあげた。

部屋にはダブルベッドが２台、微妙な距離で離されて鎮座していて。

私は片方のベッドに、素知らぬ顔で先に潜り込んだ。









几帳面な彼は、ドアの鍵やバスルームの消灯を確認してから、静かにベッドの傍までやってくる。

部屋はもう真っ暗だし、私はベッドの真ん中を陣取ってるし。

さあ、どうする？

だけど彼はどちらのベッドに入ることもなく、

「A」

と、私の名前を呼んだ。

シーツから目だけを出して、

「…何？」

そう返事をするけど、急に消された明かりで目が慣れないせいか、彼の姿もよく見えない。

「お願いがあるんだけど」

お願い…？

それは…、どういうジャンルのお願いなわけ？

けっこう深刻なヤツ？

それとも、今夜のこれからについてのお願い？









「今夜は、俺の好きにさせて欲しいんだけど」

彼のその言葉に、私の頭は疑問符でいっぱいになる。

好きにさせて欲しい？

それはどういう意味で？

「今までは、Aの様子を見ながら探り探りだったけど
今夜は俺のペースで進めていい？」

彼の言うことは、私にはわかりづらい。

だけど、言いたいことは何となく伝わってきた。

今夜は自分のペースで私を抱きたいってことだよね？

だから、

「いいよ」

そう、簡単に答える。

だって、興味があったし。

彼がどんな風に進めたいのか。









暗闇の中、衣擦れの音と共に彼の体温が近付いてくる。

この瞬間が一番好きかも。

いつもなら焦らすように近付いてくる唇も、今日はすぐに降りてきて、

それに、いつもより濃厚。

…てか、ヤバい。

私の予想では、彼の言う「好きなようにする」は、自分本位な行為だと思ってたんだけど。

…真逆だった。

いつもよりキスの時間も長いし、触れてる時間も長い。

布越しにだとか、服の中に手を入れた状態で、もう10分以上は過ぎてるんだけど。

ヤバい…、なめてたかも。

てかもう、まだ服を脱がされてない状態で、限界が来そうなんだけど！

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