唇とマーマレード 2

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「確かに、最近の渉様は迷走してますよね」

今日は体が怠くて昼から早退したおかげで、昼間から若葉とティータイムなんか出来てる。

最近はいつも彼がこの部屋にいるせいで、若葉と２人で本音トークをする機会もなかなかなくて。

だから、帰ってきて若葉の顔を見たらホッとした。

「渉様は一体何がしたいのか、私にも分かりませんけど…」

「けど？」

「なんだか渉様、楽しそうじゃないですか？」

「どこが？」

「私も長い間、渉様を見てきていますけど、
この間初めて、渉様が微笑んでるところを見まして…」

微笑んでる？

ても確かに、最近だよね、

よく笑うようになったのは。

笑うって言っても、微笑む程度だけど。

「A様のことを大事に思ってらっしゃるんだな、って
渉様は本気で好きなんだと思いますよ、A様のこと」

またそれ？

太輔と同じことを言うんだね。

だけど本気で好きなら、とっくに私のこと押し倒してるよ。








「で？どこまで進んだんですか？」

若葉は顔を緩ませながら、テーブル越しに身を乗り出してくる。

「…何が」

「決まってるじゃないですか
毎晩、同じベッドで寝てるくせに」

「何もないって言ってんじゃん」

「腕枕とかしてたじゃないですか
この間、起こしに行った時に」

腕枕したからって、深い関係とは限らないじゃん。

「寝る前にキスとかはしますよね？」

その質問にはわざと答えないでおく。

てか…、答える題材も全くないんだけど。









「そういえばA様、来週お誕生日でしたよね？
渉様と２人でお祝いですか？」

「しないんじゃない？何も」

「まさか！
さすがの渉様でも、奥様の誕生日をスルーはありえませんって」

「だって彼、私の誕生日とか知らないと思う」

そう言った途端に、若葉は黙り込む。

ほら、心当たりあるでしょ？

彼はそんなに気の利く人じゃないから。

「私から申し上げておきましょうか？」

「言わなくていい
むしろ、黙ってて
それに私だって、渉さんの誕生日知らないし」

「渉様の誕生日は…」

言いかけた若葉の言葉を手で制した。

「いい！
知らないままでいたいから」

「それなら私と賭けません？
渉様がA様のお誕生日をお祝いするかどうか」

使用人が主人に賭けを申し込むとか、いい度胸じゃん。

「いいよ
私は、誕生日はスルーに賭ける」

「では私は、お祝いするに賭けます」

「ズルはしないでよ？」

「もちろんです」

決戦は来週末。

絶対に私が勝つ！

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