唇とマーマレード 2

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…出た、元カノ！

まさかこんな展開でカミングアウトされるとは思ってもみなかったけど。

「元カノの１人」ってことは、他にもいたってこと？

「そんなに、たくさんいたんですか？彼女」

「私が知ってるのは４人かな
その中でも私が一番長く続いたかも
３ヵ月だもん」

３ヵ月！？

たったの？

「大体、数週間か１ヵ月くらいだから」

それって、付き合ってたって言えるの？

「あの性格だしね
無愛想だし、くそ真面目で融通がきかないし」









「一度もデートに誘ってくれたこともないし、
「一緒に帰ろう」とか誘ったら、真顔で「何で？」って返されるし」

…ああ、簡単にその情景が目に浮かぶ。

わかりみがすごいっていうか。

そっか、彼は昔からそんな感じだったんだ。

「そんなだから、みんな愛想を尽かせて離れていくんだよね。
私は渉のそういう部分を知ってて付き合ってたから、長く付き合えるかなと思ってたけど
やっぱり３ヵ月が限度だった」

３ヵ月が限度…。

そういえば私達って、結婚してもう４か月も経ってんじゃん！









「今も渉ってそんな感じ？」

唐突にそう聞かれて、私は返事に迷う。

確かに女心には鈍感だし、物言いはあれだけど、

確かに彼は変わりつつあるから。

だから曖昧に笑ってごまかした。

「偽装結婚なんでしょ？
しかも別居婚で、会話もほとんどないとか」

…そっか、彼女は全て知ってたんだっけ。

だけどそれは過去の話で、

今も偽装結婚に変わりはないけど、一緒に暮らしてるし、同じベッドで寝ている。

だけど、彼女にはそれを打ち明けにくかった。

たぶん彼女は、本気で私を心配して言ってくれてるみたいだから。








そのタイミングで彼が席に戻ってきて、

「ごめん
席空けてくれる？」

彼女に向かっていきなり、そんな言い方をする。

だけどね、これは彼なりに言葉を選んで言ってるんだと思う。

少し前の彼なら、「退けて」の一言で済ませてるはずだから。

彼は無事、私の隣の席に着くと、

机の上にいくつもお皿を並べた。

「Aの好きそうなものを取ってきたから、食べて」

そんな彼の行動に、彼女は目を丸くしている。

「…渉って、そういうこと出来るんだ？」









彼はその言葉にムッとしてたけど、私は内心誇らしかった。

こんなんもんじゃないよ、最近の彼は。

大げさに言っても、私を喜ばせる為なら何でもしそうな勢いで、彼は急成長中だから。

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