唇とマーマレード 2

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バーベキュー当日、助手席で私はため息ばかりをついていた。

「そんなに嫌？」

って、彼が呆れるくらいに。

「だって、知らない人ばっかじゃん
私けっこう人見知りなのに」

「今日はみんな彼女とか家族を連れてくるみたいだから、大丈夫じゃない？」

だけどその人達だって、みんな知らない人じゃん。

もしつまんなかったら、私は１人で帰るからね？

「大丈夫
Aの傍から離れないようにするから」

…その言葉、絶対に忘れるなよ？









着いた先は、彼の友達の別荘だった。

そこのお庭でガーデンバーベキューとやらをするらしい。

バーベキューだから自分達でセッティングから炭おこしまですると思ってたのに、もう既に別荘のスタッフが全て準備済みだった。

しかも、 オードブルや軽食なんかも、まるで立食パーティーのようにテーブルに並んでいる。

…やっぱりセレブって、少しズレてるよね。

これはバーベキューと呼んでいいものなのか。









一通り挨拶が終わったあと、私達は隅のテーブルに着くけど、

予告通り、彼は私の傍を片時も離れない。

意外に可愛いヤツめ。

だけど、向かいの席に知らない女の人が座ってきたことから、彼の様子は少しだけ変わってしまった。

「遅かったじゃん」

彼女にそんな文句を言いながらも、彼はリラックスした表情を見せる。

「彼女、ゼミが同じだった瑠依
前に話した、「Aを解放してやれ」って言ったヤツ」

…ああ、この人がそうなんだ。

イメージ通りサバサバしてて仕事の出来そうな人だ。

「そんなことまで奥さんに話しちゃったの？」

って、彼女は呆れ笑い。

「大変でしょ？渉の相手をするのは」

「うん、大変」…なんて言えるわけもなく、曖昧に笑って誤魔化してみたけど。

意外だ、彼にこんな女友達がいたとは。

そのうち彼は友達に呼ばれて、少しだけ席を離れた。

その隙に彼女は、彼のいた席に移動してくる。








彼女は心配げに、

「本当にいいの？偽装結婚とか」

ストレートにそう私に訊ねてきた。

「渉ってなかなか扱いが難しいでしょ
頭固いし、頑固だし」

「そうですね」

「渉は、人の愛し方を知らない人間だから
だから渉と付き合う女の子はみんな、幸せになれない」

ずいぶんハッキリと言い切るんだね。

だからつい、

「詳しいんですね」

とか、余計なことを言ってしまった。

「だって、私も元カノの１人だもん」

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