唇とマーマレード 2

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薄れゆく意識の中で思うのは、

彼にしてやられたっていう悔しさと残念さで。

明日はもっと嫌がることをしてやろうと考えながら、眠りに堕ちていった。









翌朝の目覚めは最悪だった。

瞼を開けた途端に、視界に入ってきた彼の顔。

「おはよう」

勝ち誇ったように微笑まれて、また瞼を閉じたくなった。

私が最大級に嫌なのは、好きでもない彼と一緒に寝ることだったのに！

途端に、ガチャリと開けられるドアと、

無言で驚いている若葉の姿が見えて、

「失礼しましたっ！」

勢いよく閉められたドアの音で、ため息が漏れた。

…タイミング悪過ぎだよ。

だいたい若葉は今、休暇中じゃん！

なんで出勤してくるかな…。








案の定、寝室から出てきた私をキッチンに連れ込んでは、

「とうとうお渡りがあったんですね！」

若葉は興奮気味に寝起きの私に詰め寄ってくる。

「違うって
そんなんじゃないから」

まだ寝起きで働かない頭で必死に弁解するけど、テンションMAXの若葉には全然届いてないみたいだ。

「いいですから、そんな言い訳は
男女が同じベッドで寝て、何も無いわけないじゃないですか！」

「だから、見て
私、きっちりパジャマ着てるのに」

「渉様は事後はきっちり服を着直すタイプだと思うので」

…私の話聞いてる？









遅れて寝室から出てきた彼は、わざわざキッチンまでやって来ては、

「A、置いてくとかひどくない？」

とか白々しいことを言いながら、私の髪を撫でてくる。

…なんて人だ！

若葉の前で、一夜を共にした翌朝みたいな雰囲気をわざわざ出してくるとか。

朝から私の嫌がることばかりしてくる彼に、私は思いっきり負けてしまっている。









向かいあわせで朝食をとってる時も、

「A、ケチャップついてる」

なんでわざわざ、口元のケチャップを指で掬って、舐め取ったりするかな。

彼の背後に立ってる若葉の顔が思いっきりニヤけてるから、それも腹が立つ。

だから私は朝食後、寝室に再び彼を連れ戻した。

「何であんなことするわけ？」

「Aが嫌がると思ったから」

「ラブラブなふりなんかしなくていいから」

「何で嫌がるわけ？」

「嘘をつきたくないから、誰にも」

「嘘じゃなくて、本当にしてしまえばいいじゃん」

何言ってんだろう、この人は。

外では我慢していい夫婦を演じてもいいけど、それを家の中にまで持ち込むのだけは絶対に嫌だ！

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