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部屋はまだハウスキーピングの真っ最中で、

「バスルームはもう清掃が終わってるなら、使ってもいいですか?」

彼は早口でハウスキーパーさんに確認を取ると、バスタブにお湯を張り始めた。

濡れた服の上からバスタオルや毛布を何枚もかけてくれた彼は、怒ったような顔をして私の世話をやき続ける。

「暖かいコーヒーを淹れたから飲んで」

ハウスキーパーが掃除を終えて帰って行った頃、ようやくバスタブにお湯も溜まった。

冷えた体に熱いお湯が気持ちよくて、ちょっと長湯してしまったかもしれない。

突然、バスルームのドアがノックされて、

「A、大丈夫?」

遠慮がちな彼の声が聞こえてきた。

「大丈夫
もうすぐ上がる」

そう答えたら安心したのか、彼の足音が遠のいていく。

なんだか今日は変な日だ。

何で私は死にたくなってしまったんだろう。









バスルームから出たら、洗面台には乾いたバスローブとパジャマが置かれていた。

まさか、もう寝ろってこと?

まだお昼なのに。

とりあえずパジャマを着て部屋に戻れば、テーブルにはルームサービスのランチが届いていた。

ランチを食べてる間、彼は何も話さない。

てっきり、さっきの乱行を叱り飛ばされるんだと思ってたのに。

ランチの後、またコーヒーを淹れてくれながら、彼はボソッと呟くように話しかけてきた。

「さっきの…、このままここに寝てたら楽になれるのかなあ、とか思ってたんじゃない?」

「何でわかったの?」

冗談っぽく返したつもりだったのに、彼はやっぱり怒ったような顔でこう答える。

「俺もそれ、やったことあるから」









「大学の時だけど
友達とスノボに来てて、夜中に1人で庭に出てみた時
気持ちよさそうだなって思って雪の上に寝転がったら、突然死にたくなったことがあって
さっきのAを見てたら、それを思い出した」

驚いた。

彼のような挫折とか味わったことのなさそうな人が、死にたくなったことがあるなんて。

「そんなに悩んでたの?大学の時」

「今まで生きてきて、悩んでない時期なんか一度もない」

彼は愛想なくそう言うと、いきなり話題を変えてきた。









「そんなことより…」

そう言いかけて、彼は居住まいを正した。

「俺は…、Aが心配になった」

「心配?」

「Aは気付いてないんだろうなって思って
自分がかなり傷ついてることに
だから、急に死にたくなったりするんじゃない?」

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わかめ(プロフ) - Mayさん» 不器用な感じが出ててよかったです(/ω\*)そして、新キャラ加入しました(T△T) (2019年2月10日 0時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
May(プロフ) - 切ないです、、なんて不器用な二人!秘書の人嫌な感じだけど大丈夫ですかね(>_<) (2019年2月8日 7時) (レス) id: 9190cd750e (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - かんこさん» 実は電話番号が聞きたかったんですねーwしかも聞くタイミングを完全に失ってたというwwwぼちぼち更新してますのでまた読んでやってくださいm(_ _)m (2019年1月19日 0時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ゆなさん» コミュ障!まさにそんな感じです(/ω\*)渉さんが可愛い人に変わったとか、ありがとうございますm(_ _)mまた読んでくださるとうれしいです♪ (2019年1月19日 0時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - 華子さん» はじめまして!コメントありがとうございますm(_ _)m不器用な渉さんが今後成長していけるのか、また読んでくださるとうれしいですm(_ _)m (2019年1月19日 0時) (レス) id: ba720923d0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2018年12月19日 23時

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