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それきり彼は、夜にふらりとこの部屋へ現れることはなくなった。
朝の出勤中でも、全く会話はない。
ホッとしてるんでしょ?本当は。
これが渉さんの望んでた結婚だし。
それに私も、彼の行動にいちいち心を乱されなくなって、少し楽になれた。
23日の朝、休日なのに若葉に強引に揺り起こされる。
「起きてください
クリスマスパーティーの準備を始めますよ」
「…明日じゃなかった?それ」
「買い出しとかいろいろあるんです
そもそも、買い出しについて行きたいって言ってたのは、A様じゃなかったですか?」
最近、若葉は私のことを「奥様」ではなく「A様」と呼ぶようになった。
「何で?」って聞いても、
「だって、A様には「奥様」っていう呼び名はまだ似合いませんし」とか、けっこう失礼なことを言ってくる。
「そういえば渉様、さっき出かけたみたいですね」
「…何でわかんの?」
「先ほど、車で駐車場を出て行く所をお見掛けしましたので」
「彼、車持ってたっけ?」
「休日くらいしか乗らないみたいですけど
地下の駐車場にいつも置いてありますよ」
知らなかった。
もしかして結婚式の帰りに乗ってた車がそうなのかな。
私は本当に、彼のことを何も知らないんだな。
今日はタクシーに乗って、ちょっと離れた大きな百貨店までお買い物。
もちろんその英国式ディナーとやらの食材と、部屋の飾りつけやパーティーグッズなんかを買いに。
デパートの地下でチキンを物色している若葉の後ろで、
まるで母親に連れてこられた子どものように、所在なげにぼんやりとその様子を眺めている私。
だけど…、
見覚えのあるジャケットを着た男性が、女性を伴って目の前を横切ったのが見えた。
タイミングよく顔を上げた若葉とその2人は目が合ったらしく、
「若葉、久しぶり!」
その女性は、若葉の手を取って大げさに喜び始める。
…そう、その女性はたぶん瑠璃子さんで。
その隣に立っているのは、彼。
彼は私を見つけて一瞬だけ驚いた顔をしていたものの、その後は相変わらずの仏頂面で。
瑠璃子さんがこちらに気付くのが怖くて、私は他人のふりをしてそのまま売り場を通り過ぎた。
…なるほどね。
やっぱり、そういうことだったんだ。
クリスマスは瑠璃子さんと二泊三日のクリスマスデートってわけ?
何が人を好きになったことがない、だよ。
しっかり腕まで組んでたくせに。
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まいまい(プロフ) - あー、面白すぎます!!今頃この作品に気づきました。渉さんが愛に気づくことが出来ますように。こういうストーリーに入り込んだのは初めてです。とても面白くて、大好きなお話です。 (2021年5月4日 7時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - keitoさん» 確かに!なんかその2人、しっくりきますよね!言われてみればって感じで納得です! (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - saryuさん» はじめまして。コメントありがとうございました。今のところ毎日更新ですが、いつ止まっちゃうかわかんないんで、ちょっとドキドキしながら書いてます(/ω\) (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
keito(プロフ) - 好きすぎて実写化するならば…と、役者を思い浮かべてます。まずは主人公ちゃん。ガッキー、はるさん…うーん。なんて考えてたらシリアスなシーンでサスペンスかよってつっこんでしまいました。緩急が心地いい(*´ω`*) (2018年12月19日 11時) (レス) id: 91adf91c90 (このIDを非表示/違反報告)
saryu(プロフ) - はじめまして、毎日ワクワクしながら更新待ってます。 (2018年12月19日 1時) (レス) id: 1be03817b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2018年11月16日 8時