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「会社が軌道に乗ったら、離婚すれば？」
太輔は無責任にそう慰めてくれるけど、それくらいでは私の気持ちは晴れなかった。
こうやって愚痴を零してても、やっぱり本当のことは太輔には言えない。
偽装結婚で別居婚で、愛されてなくて大事にもされてないという、この現実を。
「そろそろ帰らなくていいの？
旦那さん待ってんじゃないの？」
太輔の優しい声が、音楽みたいに耳にスルリとを入り込んでは、抜けていく。
今が何時なのかもわかんないし、どうせ家で待ってくれてる人なんかいないし。
きっと私がこのまま帰らなくても、彼は気付かないんじゃないかな。
太輔は何度も、
「もう、やめとけって」
って止めてくれたけど。
でも、こんなに酔いたいって思ったのは、人生で初めてのことなんだ。
酔ったらきっと楽しくなるって思ってたのに、私は逆のタイプだったみたい。
私の最後の記憶は、強引に乗せられたタクシーの中で、太輔の手を握ってわんわん泣いてたところまで。
そこから先のことは、全然覚えていない。
目覚めた時、私は自分の寝室にいた。
真っ暗な部屋の隅で、明るく光るものが見えて、
目を凝らして見たら、壁際のライティングデスクで、ノートパソコンに向かっている彼が見えた。
シーツの動く音で、彼がこちらを振り返る。
「…お酒、好きだったの？」
何の抑揚もないトーンで、無機質に部屋に響く彼の声。
彼の視線は冷たくて、たぶん今、私は軽蔑されてるんだな、ってことだけはわかった。
「調査書にはそんなこと書いてなかったけどね」
「…調査書？」
「普通しない？
結婚前に興信所に調査を頼んだりだとか
特に俺達の場合は、お互いのことを全く知らなかったわけだから」
そんなの、私はしてないけど。
「藤ヶ谷くんだっけ？
彼が送ってきてくれた」
「知ってたんだ？太輔のこと」
「調査書に書いてたから
同期で仲がいいって」
その調査書って、私のどこまでが書いてあるわけ？
太輔のことまで調べられてるなんて。
「何でこの部屋にいるんですか？」
それが一番不思議なんだけど。
私と同じ空間になんか、いたくないんじゃないの？
「…ずっと泣いてたから
寝てるくせにずっとグズグズと」
泣いてた？
もしかしてタクシーで泣いてた時から、ずっと泣きっぱなしだったわけ？
「「もう私の人生終わった」とか「私は一生誰からも愛されることなく死んでくんだ」とかって…、ずっと泣いてた」
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まいまい(プロフ) - あー、面白すぎます！！今頃この作品に気づきました。渉さんが愛に気づくことが出来ますように。こういうストーリーに入り込んだのは初めてです。とても面白くて、大好きなお話です。 (2021年5月4日 7時) (
レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - keitoさん» 確かに！なんかその２人、しっくりきますよね！言われてみればって感じで納得です！ (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - saryuさん» はじめまして。コメントありがとうございました。今のところ毎日更新ですが、いつ止まっちゃうかわかんないんで、ちょっとドキドキしながら書いてます(/ω＼) (2018年12月20日 13時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
keito(プロフ) - 好きすぎて実写化するならば…と、役者を思い浮かべてます。まずは主人公ちゃん。ガッキー、はるさん…うーん。なんて考えてたらシリアスなシーンでサスペンスかよってつっこんでしまいました。緩急が心地いい(*´ω｀*) (2018年12月19日 11時) (レス) id: 91adf91c90 (このIDを非表示/違反報告)
saryu(プロフ) - はじめまして、毎日ワクワクしながら更新待ってます。 (2018年12月19日 1時) (レス) id: 1be03817b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わかめ
| 作成日時：2018年11月16日 8時
