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「またミスかっ!お前は何度言っても出来ないんだな!」
「すみません。やり直しさせてください。」
「…今日中に仕上げて来いっ!」
「はい、分かりましたっ、」
またやってしまった。
使えない、平凡以下で、何の取り柄もない私だけど
支えてくれる人もいる。
「またかぁ。…せやから、このやり方はこうやって言うたやろ?」
「ありがとう、けんちゃん」
「ほら、俺も終わったら手伝ったるから」
さすが、脳みそはアンドロイドなだけあって
一度やったことは覚えられるらしい。
それもやっぱり慣れなくて不思議なことだけど
けんちゃんならいいかな、って。
「ふぅー、…終わった。」
「はよ帰んで?」
「うんっ、」
帰り道。
コンビニに立ち寄ってアイスを二つ買うけんちゃん。
「アイス?」
「…A頑張ってたからな」
「ありがとう、本当に嬉しい!」
さりげない優しさ、気遣い
これも基本性能としてついているものなのだろうか。
でもそれを聞く必要なんて私にはないから。
私が作った晩ご飯を、
たくさん食べてくれるけんちゃんがいれば、
美味しいそうに食べてくれるけんちゃんがいれば、それで。
「美味しい、この新作美味しいよ」
「…よかったぁ。美味しそうに食べてくれるからこっちも嬉しいわ」
「美味しいそうに食べるのは得意だよ」
「…せやったなぁ、はははっ」
食後にけんちゃんが買ってくれたアイスを食べる。
私が思ってたことと同じことを考えてて
それをちゃんと口に出せるけんちゃん。
何が面白かったのか分からないけど、
急に笑い出すけんちゃん。
「A、髪の毛食ってんで、…くくくっ」
「ふふっ、ありがと」
さらっと髪の毛をといてくれるその細い指があまりにも綺麗で
不自然なまでに思わず見とれてしまった。
「…なんか、そんな見んといて。恥ずいねん」
「あっ、ごめん」
「…俺もAずーっと見たろか?」
「やだ、やめてよー」
「…可愛いなあ」
「…あ、ありがとう?」
「なんで疑問系やねん(笑)」
ささやかに ふふふ、と、豪快に はっはっは、と、
笑いあえてたらそれで。
私はこの上なく、幸せを感じるんだ。
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作者名:葵 | 作成日時:2017年3月6日 20時