求婚...年の差 (ページ35)

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３５話目ページ35

「勝己兄ちゃん、おはよ！」

Aは学生らしく、元気に爽やかに挨拶をしてきた。

「くっそねみぃ...くわぁ。」

バイクの整備をしてたらついつい夢中になって、ふと気付くと深夜２時。

普段の仕事の疲れもあり、欠伸がどうにも止まらない。

「行こっ！海行こう！！」

腕に絡みついてぴょんぴょん跳ねる。

「へいへい、お嬢さんどうぞ〜。」

Aにヘルメットを手渡すと、後に座って腰に腕を回してきた。

以前、バイクに乗せた時よりも、胸の感触がよくわかる。

(...っ、俺...辛ぇ。)

「しっかり掴まってろよ。」

声を掛けるとアクセルを2〜3回ふかして走り出した。

「気持ち良いねぇ！！」

「...だな。」

久しぶりに全身に風を受けて走ると、やっぱりこっちの方が好きだと実感する。

後ろで楽しそうに話すAの声を聞き、ヘルメットの中で俺はニヤついてしまう。

(やっぱ可愛いわ...こいつ。)

心底、ヘルメットがフルフェイスで良かったと思った。

渋滞している車の間を縫うように走り抜け、１時間程で目的地である海岸に到着した。

潮干狩りシーズンの海岸は、人人人で、ごった返している。

「ったく...人だらけじゃねぇか。」

俺は顔バレを防ぐ為、帽子を目深に被り、サングラスをかけた。

「あ、あっち行こう、あっち！」

Aが指さした砂浜は、アサリが撒かれていないらしく、人の姿は殆ど見えない。

「おう。」

Aの手を握り締め、砂浜に向かって歩き出した。

「勝己兄ちゃん！」

「あぁ？」

「んふふ、呼んだだけっ！」

「用がねぇなら呼ぶな。」

「だって、嬉しいもん！付き合って初めてのデートだよ！」

「長く居過ぎて、ときめきも何にもねぇけどな。」

「私はときめくよ！」

「はい、はい。」

頭を撫でてやると、「もう子供じゃない！」と真剣な顔をして言ってきた。

「まだ大人でもねぇよな？」

「...後４年。」

「後４年か、早ぇな。おぉ、眩しい！」

サングラスを外してシャツの胸元に引っ掛ける。

「早くないよ！勝己兄ちゃんに会って、やっと７年目だよ？」

「ま、ガキん時の１年は長ぇな。ここ、座れんぞ。」

半分埋まったテトラポットに２人で並んで腰を下ろし、来る途中で買ってきたブラックコーヒーを飲みながら海を眺める。

「勝己兄ちゃんが私を大人にしてくれたら良いじゃない！」

「ブッ！！！ゲッホ...ゲホッ！！」

俺は口からブラックコーヒーを吹き出し、思い切り咳き込んでしまった。