求婚...年の差 (ページ30)

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３０話目ページ30

「やりたく...なっちゃった？」

Aの口から、耳を疑うような言葉が発せられた。

何も言えずに硬直している俺を見て、「んな訳ないね！」と無邪気に笑う。

「勝己兄ちゃんは大人だし、こんな事しても平気だもんね！」

唇に唇をそっと...合わせてくる。

「クラスの男子がそんな事ばっかり言っててうるさ...」

その時の俺は、頭の中が真っ白になっていて...考えるよりも先に体が動いてしまっていた。

Aの体を強く抱き締めると、小さな唇に噛み付くようなキスを落としていく。

「かっ！...んっ、んんっ...は...。」

ぴちゃぴちゃと唾液の混ざり合う音と、Aの苦しそうな息遣いが聞こえた。

逃げる舌を追い掛け、絡ませる。

最初は抵抗していたAの体から段々と力が抜けていくのがわかった。

「はっ...は...勝己...にいちゃ...。」

とろけた女の顔で...俺の顔を見つめてくる。

(...これ以上しちまったら...止められねぇ。)

回り出した頭の中で、警鐘が鳴り響いた。

「...帰れ！」

「...にいちゃ...。」

「さっさと帰れや！じゃねぇと...無理矢理やっちまうぞ！！」

ビクッと体を跳ねさせ、Aの顔が段々と引きつっていく。

ドン！と俺を突き飛ばして部屋から走り出て行った。

その小さな後ろ姿は、泣いているようにも見えた。

(くそが...くそっ！何してんだよ！！)

中学生相手に...何て事をしたんだと自分を強く責める。

(もう...抑えられねぇな。本気で襲っちまう...わ。)

翌日、近所の不動産屋に行ってマンションを契約し、Aから逃げるように引越しをした。

４月になり、俺は当初の計画通り、無事にヒーロー事務所を開設する事が出来た。

仕事の依頼も順調で、目が回るような忙しさの中、充実した日々を過ごし、Aの事を思い出す暇もなかった。

「じゃ、お先〜！！」

「おう、お疲れ！明日も頼むぞ、クソ髪！」

「当たり前だ！って、いつまでクソ髪なんだよ。じゃ、俺行くわ！」

仕事を終えたクソ髪が、バタバタと事務所を出て行く。

どうやら彼女が出来たみたいで、逃げられまいと必死に時間を作っては会いに行っていた。

「...くわぁ。」

欠伸をしながら時計を見ると、21時になろうとしている。

(...飯食って帰る...か。)

簡単に机の上を整理して、電気を消すと、事務所の鍵を閉める。

何処で食おうかと悩みながら歩いていると人とぶつかり、慌てて振り向いた俺の視界に...雄英の制服が入ってきた。