猫１１ ページ11
「どうして？」
「ど、どうしてじゃねぇ！クビっつうのも納得いかね「かっちゃん、雇ってあげてね、勅使河原さん。」」
突拍子に訳のわからない事を言われ...言葉に詰まっているとポンポンと好きな事を言い出した。
「来年に事務所開くって情報が来てね。なら事務員いるよなぁって。そもそもかっちゃんが僕に勅使河原さんの事を聞いてきた時点で気になってるのかなって思ったし、まぁかっちゃんなら安心して任せられるなって。勅使河原さんは本当に優秀な人で手放したくないけど、«爆豪ヒーロー事務所»の為だから仕方ないよね。...サイドキックになれなくてごめん。」
「な...な...黙って聞いてりゃ好きな事言いやがって！」
「あ！急に起き上がっちゃダメだよ！」
全身に痛みが走った俺は...呻き声をあげて体を丸める。
「僕も勅使河原さん...好きだったけど諦める...よ。後はよろしく頼んだよ、かっちゃん！」
そう言って勢い良くドアを閉め...デクは帰って行った。
部屋に...重苦しい沈黙が...流れる。
「あ、あの...無理して雇っていただかなくても...大丈夫です。」
「...雇うも雇わねぇも...現段階で何にも言えねぇだろが。肝心の事務所もねぇのに。」
「そう...ですね。」
「大体...てめぇは何の意図があってんな事したんだ？ったく、良い就職口棒に振りやがって。」
Ｎｏ１ヒーローの事務所で働けるってのは、望んでもなかなか叶うものではない。
仕事は途切れるはずもなく、万が一にも食いっぱぐれる事は皆無だ。
Aは顔を上げ、口をパクパクとして黙り込んでしまう。
「ハッキリしろや！うじうじしてんな、めんっどくせぇ！」
「あ、あのっ！あの...好きに...なってしまいました。大変...申し訳ございません！」
前屈でもしてるのか？って位に頭を下げるA。
それに申し訳ございませんって...。
我慢しようと思ったが笑いが込み上げてきて...思い切り吹き出してしまった。
俺のその姿を見て、Aは泣き出しそうな表情になった。
「あ...の...その...。」
「あはは、てめぇ最高だわ！腹痛ぇ...。」
ひとしきり笑い、落ち着きを取り戻した俺は静かに話し始める。
「事務員として雇うかは...これから決めさせてもらう。」
「はい。」
「の、前に...とりあえず側に居ろや。」
「とりあえず...側...ですか？」
Aは小難しい顔をして目を泳がせた。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2018年2月3日 5時
