３５話目 ページ35
「うー、段々と寒くなってきたな〜。」
「日中はまだ半袖でちょうど良いのにな〜。」
カラオケに行った帰り道...Aと上鳴が肌寒そうにＴシャツから出た腕を擦りながら話している。
「俺と腕組んだら温かいぜ？」
「いらん！下心丸見えやもん。」
瀬呂の腕をぺしっと叩いて、フンッと顔を背けた。
「んな寒ぃんなら走れや？」
「おう！寮まで後少しだし、競争しようぜ！」
「じゃさ、切島！走んの良いけど...何か賭けよか？張合いないやん？」
「えー、A、足速ぇじゃん！」
上鳴がAの頭をグリグリとする。
「じゃ、明日の放課後...皆にジュース奢る！にしようぜ？」
瀬呂が腕を上げながら張り切って提案してきた。
「ったく、他に案はねぇんかよ？」
「え、でもあまりに高いもんやったら財布寒いで、爆豪？」
「まぁ、妥当なところだろ？」
「だよな、切島！」
俺ら５人は頷き合うと、電柱を目印に一直線に並んだ。
「掛け声は誰すんの？」
「じゃ、俺！よーい...ドンッ！」
上鳴の掛け声で一斉に走り出す。
「A、やっぱ速ぇ...じゃん。」
グンッと先頭を切って走って行くA。
「待てや、こら、クソチビ〜！」
「俺も...負けねぇ！」
A、爆豪、俺、瀬呂、上鳴の順で坂道を駆け上がる。
途中、瀬呂がバテ始め、瀬呂と上鳴の順位が変わる以外は順不同のままで寮の玄関にゴールした。
「やった！１位！」
肩で息をしながらバンザイをするAの頭を爆豪が掴んだ。
「クソチビ...いつか...勝ってやる...。」
「爆豪...Aには...叶わねぇよ。」
ゼェゼェと息をしながら俺が言うと「あ？今に見てろ...よ。」と睨み付けてくる。
「その負けず嫌い...すげぇな。」
「こんなかけっこにも...かよ。有り得ねぇわ。」
上鳴と瀬呂が苦笑いをしながら爆豪の頭を撫でた。
「とりあえず...部屋に戻ろ？熱いし...？」
Aはそう言って靴を脱ぎ、エレベーターに向かって歩いて行く。
「触んなや！アホ面！しょうゆ顔！」
俺は暴れる爆豪を横目に寮に入ると、Aの隣に並んで歩いた。
「高校生にもなって...何してんやろな？」
「まだまだ俺らは...ガキって事だな？」
全力で走っときながら...呆れ顔で笑い合う。
エレベーターに乗り、開ボタンを押して爆豪達が来るのを待っていると、Aが俺の背中に抱きついてきた。
「背中大きいなぁ。男の子って感じがして...好きや。」
俺の腰に回されてきた細い腕を、ぎゅっと握りしめた。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2017年7月14日 19時
