１７話目 ページ17
「ここの信号長いから歩道橋で渡ろ？」
そう言ってAは歩道橋の方へ歩き出した。
「階段もめんどくせぇっつうの！」
「でもよ、爆豪。当分変わんねぇぜ、この信号。」
「はーっ、わーったよ。」
「早よおいで〜！」
Aは階段の途中で振り返って手を振る。
「わっ！A！前っ...前見ろっ！」
「A！ババァが落ちて来てんぞ！」
「...え？って、わぁっ！！」
Aに向かって、階段を踏み外したお婆さんが抱きつくように落ちてきた。
咄嗟に抱きかかえようとするも、不安定な体制だったAも一緒に落ち始める。
「くそがっ！」
爆豪が片手爆速ターボで俺の腕を掴んで飛び出し、俺はAを、爆豪はお婆さんを抱きとめた。
「あ...あら...ごめんなさいね。」
お婆さんがAの頬と俺の頬を撫でて笑い、爆豪の肩を持って立ち上がる。
「お婆ちゃん、大丈夫？って...声が変！！」
「えっ！？俺が...居る！？」
「はぁっ！？何やっとんだ、てめぇら！冗談は寝て死ね！」
「あら、個性...出ちゃったみたいね。」
俺とAの体が...入れ替わってしまった！？
「おい、こら、ババァ！今すぐ戻しやがれ！」
「勝己！あかんって、そんなん言うたら！でも...いつ戻りますか？」
俺が、俺の体が爆豪に抱きつき...“勝己”と呼んでいる...。
「わぁぁ、気持ち悪ぃ！」
「俺も鳥肌たったわ！ほら見ろ！」
爆豪がAの姿をした俺の前に腕を差し出してきた。
「最近は個性出なかったんだけどね。もう歳だから、明日の朝までには戻ると思うわよ？ごめんなさいね、助かりました。」
お婆さんは唖然とする俺らを残し、よちよちと歩いて行く...。
「と、とりあえず...鋭児郎の部屋に戻ろ？」
「...A、クソ髪の図体でそのポーズやめろや！」
人差し指を唇に当て、首をかしげて爆豪を見ていた。
「...っ！そんなん言われても！」
「うへぇ、低っ！」
立ち上がると、とても低くなってしまった視界。
爆豪が大きく...見えた。
「低い言わんといて！でも、鋭児郎のこの視界は良いなぁ！」
嬉しそうに俺の声で話し、爆豪に腕を絡ませると思い切り振り払われてしまう。
「...きめぇ！俺に...触んなっ！」
「そんなん...私やのに...。」
今度は俺に俺の体が抱きついてくる...。
「...固ぇ...。柔らかくねぇ...。とりあえず...寮に戻るぞ！」
悲しそうな顔をする俺...いや、中身はAの頭を背伸びして撫で、急いで寮へと帰ってきた。
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作者名：梅シロップ | 作成日時：2017年7月14日 19時
