ハニーシロップと夏怪獣（Yuri.C）

． ページ47

侑李side


．



スプーンを目の前に、ずっと目を泳がせているA



照れてるのか、恥ずかしいのか、慣れていないのか、はたまた拒絶しているのか、




それとも……そんなに僕のことが好きなのか。



なーんて、そんなことは無いんだろうけれど。









僕の異性の好みは、周りにいる男子のそれとは結構ずれている。


基本はクールビューティーが好きで、ツンツンツンツンツンデレくらいの比率が良いし、僕のことを引っ張っていってほしい。

なんなら、僕が大和撫子ポジションで彼女の一歩後ろをついて歩きたいくらいだ。



ふわふわした可愛い女の子なんて求めちゃいない。だって、可愛さは僕自身の可愛さで充分間に合ってるから。





……そう、思ってたんだけどな。






可愛いとか、守りたいとか、

そんな一般男性みたいな感情を持つ日が来るなんて。





．





侑李「…溶けちゃうよ？」



僕のその一言にようやく観念したのか、おずおずとスプーンをくわえたA



だけど、その一口は散々待ちぼうけをくらっていたわけで




「ん、！」



淡いピンクが、その唇をつたっていく。




侑李「あーあ、垂れちゃった」



そんなふうにからかって余裕かましてたら




彼女は自分の指先で器用にすくいとって、
あろうことかそれを浅く咥え込んだ。


上目遣いでこっちを見ながら、クチュッと音を立てて。




「……あ、ごめん、！！」

侑李「…いや、」

「お行儀悪いね、ほんとごめん、」

侑李「べつに気にしてないけど」

「手、手洗ってくる、！」



顔を真っ赤にして恥ずかしそうに席を立ったA



微かに聞こえてくる水道の音を聞きながら、僕は思わず顔を覆った。




侑李「……んあぁぁぁ、…もう、」




なんだこの衝動は。ぬいぐるみでも枕でも何でもいいから、何かを思いっきり潰れるほど抱きしめたい。可愛すぎる。


なんだこの興奮は。なんでこの程度で興奮してるんだ。思春期か。ポテチ食べた後とかあんなのよくやる仕草だろ、冷静になれ自分。






…僕はこの恋心と下心を、隠し通せるのだろうか。


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