理由 ページ45
「怖かったんだ…凄く楽しくて幸せだったのがただの自己満足で、皆からしたら私は邪魔者だったんじゃないかって」
「そんなわけないじゃないですか、あいつらだって先輩を悪く言いたかったわけじゃないんですよ…仲良くなりたくてもなれなかったからあんな言い方してただけで」
今思えばそうなのかもしれない。
けれどあの時はそんなこと考えようともしなかった。
全てマイナスの方向へ持って行って、自分を悲劇のヒロインみたいに仕立て上げてたの。
ベクは手元にあるグラスをまた飲み干した。
それから大きく息を吐き出して目を瞑った。
「本当に後悔しかしてないんですよ…なんであんな聞き方したんだろうって」
眉間に皺を寄せて、苦しそうな顔をしている。
私はベクにこんな顔をさせてばっかりだ。
「ベクが違うことを私に聞いてたとしてもあれは変わらなかったと思う。きっと同じことをしてた」
「絶対に違う。絶対にあんなことにはならなかった」
どうして?
ベクがあそこが好きだったかどうかを聞かなかったとしても私は3人の会話を聞くことになっていたはずだ。
あれを聞いてしまったら、昔の私なら絶対に同じことをしていた。
追加注文した飲み物をまた飲み始めたベクを見て流石に飲み過ぎなのでは無いかと不安になってきて、止めるべきか迷っているとずっと黙って聞いていたミンソクさんがベクからグラスを奪い取った。
「お前飲み過ぎ」
「ヒョンよりは飲んでないです」
「お前は強くないだろ」
ベクは顔を顰めて仕方なく、といったふうにお酒を諦めて再び私へと視線を戻した。
「とりあえず…チャニョリとは仲良くしてやってください。ほんとにずっと後悔してるんすよあいつ」
「どうして…?何もしてないのに…」
「何もしてないから後悔してるんです」
意味がよくわからなくて首を傾げると、ミンソクさんが助け舟を出してくれた。
「何も出来なかったからじゃないですか?傷付いたAさんに」
「そうです。そうじゃないって言いたかったのに初めて見る先輩に驚いて何も言えなかったし、出て行く先輩を引き止める事も出来なかったって」
だから会った時あんなこと言ってたんだ…本当にどこまでもお人好しで優しい人。
優しすぎると傷つきやすいのに。
あんなふうにベクを突き放した私に真正面からぶつかってくれるベクも、優しすぎるんだよ。
傷付かないで欲しい人ほど、優しいんだ。
世の中は本当に理不尽だ。
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K(プロフ) - さえさん» そう言っていただけるととても嬉しいです(;_;)コメントもたくさんくださって本当に力になっています!ありがとうございます!! (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - グロリオサさん» 他の作品も読んで下さっているんですね、ありがとうございます…!ありがたいうえに私には勿体無い言葉ですがとても嬉しいです!これからもよろしくお願いします(^^) (2018年3月15日 18時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
さえ(プロフ) - 暗いとか思ったことないです!切なさもあり心温まるストーリーを書かれるkさんの言葉の紡ぎ方がとても大好きです!更新楽しみにしてます(^ ^) (2018年3月14日 0時) (レス) id: 74d5d29218 (このIDを非表示/違反報告)
グロリオサ(プロフ) - Kさんが書くお話はどれも切なくてハラハラしながら時間を忘れて読んでしまいます。いつも素敵なお話をありがとうございます。 (2018年3月13日 17時) (レス) id: e0624b2322 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ケイカさん» コメントありがとうございます!私にはもったいないお言葉…(;_;)もう少しお話は続きますのでこれからもよろしくお願いします! (2018年3月13日 7時) (レス) id: 16d69035ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:K | 作成日時:2018年1月31日 22時