XXVI ページ26
.
溜息が聞こえた。葉巻を砂にする音がして、それと同時に空気が動く。サクサクと土を踏み近寄ってきた彼は、徐に私の顎を掴み上げた。指の腹で涙を掬われ、強引に目を合わせる。鋭い琥珀色が私を射抜く。
「他の男に抱かれたか」
「……ハ?」
「答えろ。この二年間、誰かにテメェの体を見せたのか」
「そ、そんなことっ、あるわけないでしょう!! ふざけてるわ、あなた私の言った事聞いてた!?」
「ならいい」
「はぁ!? ──えっ、ちょっと!」
軽々と私を抱え、黙って歩き始めた彼に混乱する。迷いのない足運びで家へと向かう男の顔は無表情──というより、少し、怒っているような。肩を支える掌の力強さも不機嫌さを押し出しているようで、訳が分からなかった。
やはり体格の差は大きい。必死の抵抗も虚しくあっという間に家に連れ込まれ、乱暴に寝室へと放り投げられた。驚いている私を他所に彼がコートを脱ぎ始めるので、慌ててベッドから降りようとするものの腕を引き戻されてしまう。叫ぼうと口を開けば噛み付くようなキスに塞がれた。
「なに、なんなの、やだ、」
「黙れ。……口で言って分からねェなら、体に覚えさせるまでだ」
「は、っんぅ」
背を撫でる指も服を裂く鉤爪も荒々しい。どんなに暴れても大きな体躯に押さえ付けられ意味を成さない。
多少強引に事を進められたことはあっても、こんなに性急で身勝手な求め方は初めてだ。──それなのに、唇だけはいつもと同じ優しさを持って触れてくる。怖くてかなしくて、それでいて、愛しい。
「っ、う、わにさ」
「……A」
零れた涙を指が拭う。肌に染み込む水滴を厭うこともせず、彼はただ静かにキスを落とした。愛しさと寂しさで溺れそうになる私を抱き締めてくれていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ONEPIECE」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おはよ - めっちゃ面白い作品でした！最高です (2023年3月20日 22時) (
レス) @page44 id: d4f6705fb9 (このIDを非表示/違反報告)
白鯨(プロフ) - みうしさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 私としましてもまだ書きたいものが幾つかありますので、またぼちぼち気まぐれに更新しようかと思います。何卒気長にお待ちください。 (2022年11月13日 23時) (レス) @page32 id: 7a595430fd (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 大好きな作品が終わってしまって寂しい〜〜泣泣と思っていたら番外編も書いてくださるんですか😭😭是非読みたいです……！！ (2022年11月12日 8時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
愛ってなんや？ - 面白いです！！続き待機してます！！ (2022年10月23日 14時) (レス) @page19 id: 027cc676f2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白鯨 | 作成日時：2022年5月25日 10時
