XVI ページ16
.
「……」
「合わん。次」
「…………ねえ」
「これと同じデザインのゴールドはあるか」
「はい、こちらに」
「あの」
「もう一色は」
「鰐さん!」
「……何だ」
訝しげに私を見下ろす目は冷ややかだ。コートも鉤爪も身に纏うムスクの香りだって、いつもと何ら変わらない。
その手に握られている、女物の煌びやかなアクセサリーを除けば。
街を歩き始めてから早三時間。唐突に開始したショッピングはとうとう六件目に突入し、手持ちの袋もかなりの数になっている。購入するのは服やら装飾品やら様々で、尚且つ女性用ばかり。そう、女性用。
彼がプレゼントを贈る女なんて片手で数えられる程度しかいないし、それも皆商人や情報屋だ。そういった人物にプレゼントを渡すのは、確かに交渉を円滑に進めるという点において欠かせないのだが。
折角なので、自惚れた言葉遣いをするけれど。
商人でも情報屋でも無いものの、彼からプレゼントを受取る権利を得ている稀な女が──一人だけいる。今、彼の前に立っている。
「……沢山買ってくれるのは、嬉しいんだけど。こうも理由無く与えられると不安になるわ」
「そう怯えるな。ただの気まぐれだ」
これでいい、と店主にネックレスを渡しながら彼は言う。チラリと値札を盗み見れば、気が遠くなるような数字があって目眩がした。しかし流石と言うべきか、選んだ品のセンスは最高だった。派手過ぎず控えめ過ぎず、それでいて私好みのもの。
また一つ増えた袋を見て呆然としていると、彼は購入した全ての荷物をどこからともなくやって来た男達に預けてしまった。鍵を手渡しているのが見えたので、先に船に積んでもらうつもりなのだろう。用意周到にも程がある。
悶々としているうちに今度は隣の洋服店へ足を踏み入れるので、つい息を吐いた。
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おはよ - めっちゃ面白い作品でした！最高です (2023年3月20日 22時) (
レス) @page44 id: d4f6705fb9 (このIDを非表示/違反報告)
白鯨(プロフ) - みうしさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 私としましてもまだ書きたいものが幾つかありますので、またぼちぼち気まぐれに更新しようかと思います。何卒気長にお待ちください。 (2022年11月13日 23時) (レス) @page32 id: 7a595430fd (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 大好きな作品が終わってしまって寂しい〜〜泣泣と思っていたら番外編も書いてくださるんですか😭😭是非読みたいです……！！ (2022年11月12日 8時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
愛ってなんや？ - 面白いです！！続き待機してます！！ (2022年10月23日 14時) (レス) @page19 id: 027cc676f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白鯨 | 作成日時：2022年5月25日 10時
