XV ページ15
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目が覚めて、一番に耳にしたのは足音だった。
賑やかな話し声が絶えず聞こえており、肉を焼く香ばしい匂いもする。眠気を誘い続ける揺籃のような浮遊感から、自分が船にいる事を理解した。
気怠い身体に鞭打って起き上がり、部屋の隅にある丸窓から外を覗くと、太陽光を浴びて輝く海が見える。辺りに島の影はなく、どこまでも続いている水平線が美しい。パーティー会場へ向かっていた時は夜だったので、こうして昼間の海を眺めるのは久しぶりだ。
……というか、一体いつホテルを出たのだろう。昨晩の記憶は薄らとしているし、何時に眠りに落ちたのかさえ曖昧だ。──室内に元凶の男の姿はない。
クローゼットを開くと、持参した服の間に見覚えのないワンピースが揺れていた。真黒のシルクは手触りがよく、腰を絞るリボンはシンプルながら大きめでとても可愛い。端的に言って好みである。
今日はパンツスタイルにしようかと思っていたのだが、見れば見るほどあんまりにも可愛いので大人しく着ることにした。
ふわふわ、ふわり。動く度に広い裾が揺れて、艶々とした黒が波打った。先日買ったばかりのネックレスを身に付け
部屋の扉を開けると、強い陽射しが肌を打つ。
通りすがった船員に話を聞いてみると、どうやら彼が土産に貰ったという肉やら野菜やらをみんな渡してしまったらしい。高級食材も多々あるので、厨房も大騒ぎというわけだ。今夜はご馳走です、という男の顔はとても明るい。
一方彼は、いつも通りの顰めっ面をして船首で葉巻を燻らせている。
「ようやく
「……本当に溺れるかと思ったわ」
「クハハ……本望だろう」
まぁね、と素直に肯定すれば、彼は愉快気に笑みを零す。
──と、鋭い目が不意に私を射抜いた。視線は私の首元から腰のリボンへと流れ、風に揺れて広がる裾を一瞥し上機嫌に細められる。
「……もしかしてこれ、貴方が?」
「他に誰がいる」
驚く私を横目に似合ってるじゃねェか、なんて口角を上げるものだから、カッと頬に熱が溜まった。この無愛想な男が、他の誰でもない私のために服を見繕っただなんて。早まる動悸が治まらない。
「次の島で降りる。準備しておけ」
「……ああ、なるほど。私は付添い?」
「いいや」
「え」
沈みかけた気分がぐんと浮上する。
「プライベートだ。少し付き合え」
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おはよ - めっちゃ面白い作品でした！最高です (2023年3月20日 22時) (
レス) @page44 id: d4f6705fb9 (このIDを非表示/違反報告)
白鯨(プロフ) - みうしさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます! 私としましてもまだ書きたいものが幾つかありますので、またぼちぼち気まぐれに更新しようかと思います。何卒気長にお待ちください。 (2022年11月13日 23時) (レス) @page32 id: 7a595430fd (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 大好きな作品が終わってしまって寂しい〜〜泣泣と思っていたら番外編も書いてくださるんですか😭😭是非読みたいです……！！ (2022年11月12日 8時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
愛ってなんや？ - 面白いです！！続き待機してます！！ (2022年10月23日 14時) (レス) @page19 id: 027cc676f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白鯨 | 作成日時：2022年5月25日 10時
