42話 ページ42
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「Aさんっ!!!」
立ち止まってしまった私をなんとか炭治郎くんが抱えて脇に飛んでくれて、九死に一生を得た。継起する心理的負担のせいで使い物にならない私を守りながら、炭治郎くんは戦ってくれた。それも、十二鬼月と。
私は刀を構えたまま、石にされたようにそこで呆然としていた。彼が倒れて死にそうになったときも、私の頭も体も働かず、しかし彼は何か覚醒したように、水の呼吸とは違う呼吸で、あの鬼の頸を斬った。
そこでようやく私の思考は動き出した。
倒れ込んだ彼の元に駆け寄り、怪我の状態がかなり酷いことに、罪悪感でいっぱいになった。
「炭治郎くん、ごめん。君に戦わせてしまった。もう休んでいて」
「A…さん、禰豆子、を…頼みます、どうか」
「わかった。彼女は必ず守る」
彼は鬼の妹を連れていた。
もちろん立派な隊律違反だが、私は特に咎めなかったし、別段彼を責めようとも思わない。その子が人を喰らわず、人を守るために戦えるというのなら、それを信じたかったからだ。
炭治郎くんは安心したように微笑んで、ぐったりと気を失った。禰豆子、という名のその子が、こちらを少し警戒して見ている。おいで、と手招きすると大人しくその通りにした。
「誰か他の隊士が来たら、あなたを斬ろうとするかもしれない。私はそのとき、必ずあなたを守るから」
きょとんとした後、理解したように彼女は頷いた。ぎゅっと抱きついてきたので、少し戸惑ったけれど、頭を撫でてやった。なんだ、可愛いじゃないこの子。
結果、水柱としのぶがやってきて喧嘩をおっぱじめたが、私がしのぶをなんとか宥めた。いや、おそらく彼女はまだ納得していないが、この場で禰豆子を毒殺するなどという最悪の結果にはならないで済んだ。
「しのぶ、ありがとう。殺さないでくれて」
「冨岡さんだったら聞いてませんからね。Aさんがどうしてもと言うから。それだけです」
「…俺は嫌われてない」
「あらー、気にしてたんですか?」
…仲が悪いのだろうか、この二人。
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かんみ(プロフ) - だいふくさん» だいふくさん!!毎作愛情が湧き上がってるんですけどこの作品は思い入れが特にあるので是非堪能してやってください(泣)いえ、私なんぞまだまだです、精進します...!!ありがとうございます! (2021年1月12日 19時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
だいふく - 続編楽しみにしています!!本当に、夢主と煉獄さんの関係がなんともいえず儚く美しくて、話も切なくて既に泣きそうです。かんみさんの語彙力と文才が素晴らしすぎて毎回感動しています。何度でもいうけど大好きですー!! (2021年1月12日 13時) (レス) id: 914794939f (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ヒカルさん!コメント嬉しいです!またお会いできて舞い上がってます〜!構成の都合上、煉獄さんと仲良くなるのがゆっくりですが段々糖度あがっていく予定です(ふふ)。 (2021年1月10日 17時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒカル(プロフ) - 本当にかんみさんの作品好きすぎて、更新されるたびにキュンとニヤニヤが止まらないです。笑、これからも頑張ってください^^ (2021年1月10日 14時) (レス) id: f04d7ddf7d (このIDを非表示/違反報告)
かんみ(プロフ) - ユリアさん» 初めまして。ユリアさんコメント嬉しいですー!私も作品読ませて頂いてます(歓喜)。胸がいっぱい...、ありがとうございます!頑張りますー! (2021年1月9日 13時) (レス) id: f3524979ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かんみ | 作成日時:2021年1月1日 16時