優しい手は、 ページ6
ビュウウ…という強風が吹き、目を瞑る。まるで、私をそう促しているかのように。
「それを呑めば、貴女が望む世界に行けるかも、ね…?」
そんな彼女の声が頭に響くようにエコーする。私の望む世界に行ける?何を言っているんだこの人は。
そう思いながら、目を開けると。
「…!…あれ…?」
強風で舞った落ち葉がカサリと乾いた音をたてて落ちる。
が、そこにはもう、女の人の姿は何処にもなかった。見渡しても、路地裏を覗いても、いない。そんなすぐに私の前から消えるくらいの時間はたっていないのに。
残されたのは、私ただ一人と、手渡された赤い瓶だけ。
不審に思わなくもなかったが、別にどうということはないし、それほどの興味もないし、
「……帰るか…」
冷静にもそう呟き、私は自宅へと足を進め始めた。謎の赤い瓶を右手に持ちながら。
突然のイレギュラーがあったものの、すぐに私の日常は帰ってきた。
やっぱり、いつものこの日常は、
つまらない。
*
「ただいま」
がチャリと玄関扉を開け、誰もいない家にそう呟いた。当然誰もいないのだから返事が返ってくるはずもない。
でも、
『あ、おかえりA!今日の晩御飯、オムライスでいい?』
「……」
未だにそんな、お姉ちゃんの声が聞こえてくるような気がして嫌になる。もう、あの人はいないのに。
静まり返る廊下を真っ直ぐに進み、リビングへと続く扉を開ける。テレビやテーブル、椅子、ソファーが何の声も発することもなくただそこに佇んでいる。
スクールバッグをソファーに放り投げると私はすぐにお姉ちゃんの仏壇の前に行き、座布団の上に座る。お姉ちゃんがいなくなってすぐ、私は泣きながらずっとここに座っていたから、座布団は既にぺちゃんこだった。
蝋燭に火をつけてお線香に当て、供える。毎日、朝と帰ってきてすぐにやっているのでもう馴れた。それからいには、もう時はたっているのに、
「…っ、」
未だに、涙が出てしまうのは、なんでだろう。お姉ちゃんの前に座ると、今まで何とも思っていなかったこと全てが突然、込み上げてしまうのはどうしてだろう。
お姉ちゃんが生きていた時もそう。お姉ちゃんの前では、どうしてか素直になれて、泣いて、笑って、それをお姉ちゃんは優しく撫でてくれて。
でももう、私が泣いていても、撫でてくれる優しい手は、何処にもない。
…私は、一人だと、改めて実感させられる。
銀魂!ラッキー長篇んんん!
さらば真選組篇
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よもぎ(プロフ) - 面白いです!でも握手で右手をだされたら左手で握手っておかしい気が、、、でもかなり展開好きです! (2019年10月28日 23時) (レス) id: 445efeaafe (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 銀魂ーーー!!!(絶叫) (2017年5月6日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 恋雪さん» 本当ですか!?感動して頂けたなら幸いですっ!!ありがとうございます!頑張りますっ!! (2017年4月5日 10時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
恋雪 - とても感動してしまい泣いてしまいました!更新楽しみにしています!これからも頑張ってください (2017年4月4日 22時) (レス) id: 9613c7c3d9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 龍神邪炎さん» コメント&ご指摘ありがとうございます!直しておきます!面白いと言って頂けて嬉しいです!頑張ります! (2017年4月3日 11時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年3月13日 23時