夢記録【d!】 (ページ5)

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「…あなたの夢をお聞かせ願えますか。」
眼鏡をかけた黒髪の背の高い男はどこか厳しい表情を浮かべた。
この男の名はトントンという。
「…はぁ、俺の夢…ですか。」

あんましそういうん見ないんやけどなぁ…と首を傾げて見せた。目の下には濃いクマがみっちりと延びていてかなり苦労しているのが見て取れる。
どちらかと言うと精神ではなくまず体を休めるべきではないかと彼女は密かに考えた。

「…トントンさんはきちんと寝ていらっしゃいますか？もしかしてストレス等で眠れていないとか」
トントンはますます表情を険しくした。
「…そのぉ、申し訳ないんやけど俺は自分の気持ちが全くと言っていいほど分からへんのや」
「……気持ちが、分からない…？」

彼女は思わず目を見開いた。
彼はやはり気まずそうに頷く。見目麗しい大男が縮こまって頭を搔くその姿に笑いそうになったが、本人は至って真剣なのだろう。
「……今何が食いたいとか、…いやそもそも腹が減ってるんかどうかも分からん。飯は時間が来たら食うだけやし。」

「…なるほど。では、夢は見ないということですか？」
ここに何をしに来たのだとやんわり問うと、トントンは意外にも首を横に振った。
「おかしいんや。」
「え？」
「Aさんが言うには夢は現実の投影…でも、でも俺は規則を他人に押し付けたりなんか…」
「………ゆっくりで構わないので詳しくお聞かせ願えますか？トントンさん」

彼は小さく頷くと、ゆっくりと口を開いた。