夢記録【d!】 (ページ4)

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「…なるほど、お話は大体理解しました。」

Aはいつものように微笑もうと口角を持ち上げたが男の凍てついた瞳に表情が強ばった。
それに気がついたのだろうか、男は取って付けたような薄っぺらい笑みを浮かべた。

「あぁ、安心してくれ。今はまだ大丈夫だ。俺は俺自身の衝動を飼い慣らせているから。今はな」
やはりこの男は＿＿

Aは手のひらにうっすらと汗が滲むのを感じた。
下手に関わっては自分がこの男の夢に取り込まれてしまいそうだ。ここは当たり障りのないことを言って凌ぐしかない。生きる意味を見出そうだなんて思っちゃいないが、死にたくは無い。ましてや得体の知れないこの男に殺されて一生を終えるなんてお断りだ。

「…それから一つ言い忘れていた。俺と君は初対面では無いはずだが。どうしてお前の記憶から俺という存在がすっぽり抜け落ちているんだろうな。」
物憂げにこちらを見やる男は一枚の絵として飾っておきたいくらいに美しい。

「……いえ、私と貴方は初対面のはずです。」

彼女ははっきりとこの男は異常であると理解出来た。もう二度と会うことのないように連絡を取ることも無くせばいい。
「…そうか。それは残念だ。君が俺を思い出すまで、俺は何度も君を夢の中で殺すだろうが…まァそれはそれで…」

男はゆっくりと背中を向ける。

「……一応名乗っておこうか。グルッペン･フューラーだ。それじゃあまた…夢で会おうか。」

静かにドアを閉めると男は振り返らずに去っていった。