美味しい美味しい ページ13
暫く河村さんと他愛のない話をしていると、注文した料理が届く。
「はい。おまたせ。ゆっくりお食べ。」
奥さんが料理と伝票を机の上に置いていく。
「あれ。」
私は違和感につい声を上げる。それは河村さんも同じだったらしく、違和感の具体的内容を口にする。
「僕たち、杏仁豆腐なんて頼みましたっけ？」
そう。私も河村さんも頼んだことのない杏仁豆腐が二つ、ちょこんと机の上に乗っていた。
「いやあ、丁度忙しくない時間だったし、河村君が来たものだから主人が調子乗っちゃってね。サービスよ、サービス。」
奥さんがそう言うと、厨房から半身を出したご主人がにっかりと笑って親指を立てる。
ご主人は程よく日焼けして筋肉がついているものだから、その格好が妙に板につく。
私と河村さんは二人揃ってご主人と奥さんにお礼を言って食べ始める。
「美味しい。」
うどんをすすると、あまりの美味しさだった。
麺はコシが強く、出汁は強過ぎず、麺と出汁が確かに互いを引き立てていた。
「だよね。ここ、知る人ぞ知るお店なんだ。」
私のぽつりと溢れた言葉を聞き逃さずに、河村さんは得意げに言う。
「はい。茶碗蒸しも凄く美味しいです。デザートの杏仁豆腐にも期待が高まっちゃいます。」
私が言うと、河村さんはカレーも凄く美味しいんだよ。と言う。
「そうなんですか？確かに美味しそうですよね。」
「でしょ？是非食べてもらいたいから、また一緒に来ようね。」
河村さんのその言葉に私は固まる。また、一緒に。こんなに大人で綺麗な人が私に興味を持ってくれている。その事実がとても嬉しいのだ。
「あ、別にナンパしてるとかそういう事じゃなくて、雛森さんと話してると楽しいし、それに知り合いでここ知ってるのって雛森さんくらいだし。ご飯は誰かと一緒に食べると美味しいし。」
珍しく焦っている河村さんにとても意外だなあと感じながらも、なんとか誤解を解く。
「いや、嫌だったらわけではなくて、私もまた河村さんとご一緒したいな、と思っていたので、だから嬉しかったんです。ありがとうございます。」
私がそういうと、河村さんはとても安心した顔をする。
「そっかあ。雛森さんも一緒だったんだね。良かった良かった。」
そうして微笑む河村さんがあんまりにも美人だから、もしかしたら私はこの人の隣にいてはいけないのではないだろうか。と少し不安になりながら笑顔を返した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 113人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
とうふ(プロフ) - 白黒さん» お待たせしてしまって申し訳ありません！言葉を褒めて頂けて光栄です！本当にありがとうございます！ (2019年3月4日 22時) (
レス) id: be202b2e24 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 連載再開して嬉しいです……！とうふ様の言葉選び一つ一つが大好きです……！ (2019年3月4日 20時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
とうふ(プロフ) - 白黒さん» 初めまして！とても深くまで読んでくださってありがとうございます！私自身も河村さんを初めて見た時から惹かれたので、そういう風な書き方になっています！ (2019年1月1日 0時) (レス) id: 70e6922578 (このIDを非表示/違反報告)
白黒(プロフ) - 初めまして。河村さん推しなのでとても素敵な作品と出会えて幸せです…！ゆったりとした流れの中にところどころ一目惚れやそういうニュアンスに近いものが混ざっていてドキドキする感覚が大好きです。 (2018年12月31日 21時) (レス) id: b3eb1b48b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とうふ | 作成日時：2018年12月30日 1時
