傾国のひとりごと (ページ44)

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互いに揃いの衣をつけ、髪を結う。Aは自分の準備は最後一人でやるから、と玉葉妃の手伝いのみしていた。

玉葉妃はせっかくだからと、自分の化粧台から飾り箱を取り出す。
中には翡翠のついた首飾りや耳飾り、簪が入っていた。

「私の侍女たちだもの。変な虫がつかないように、所有権をつけとかないと」

そういって、それぞれの髪や耳、首に飾りをかけていく。
Aには玉のついた首飾りをかけてくれた。

「ありがとうございま……」

(ひっ！)

礼を言い終わる前に、後ろから羽交い絞めにされた。
桜花がAの体にがっしり腕を回していた。

「さあてと、服を着替えて、お化粧しないとね」

刷毛を持ちにやにやするのは、紅娘である。他の二人の侍女もそれぞれ貝の紅入れと筆、衣装を持っている。

ここのところ先輩侍女たちがAに化粧をさせようと息巻いていたのを忘れていた。

「わ、私は自分で準備するので結構です...」

「なにいってるの！そんなのだめよ、私たちに任せなさい！」
貴園が衣装を持った腕で胸をどーんと叩く。

「うふふ、可愛くなってらっしゃい」

共犯者はここにもいたようだ。玉葉妃はころころと鈴の鳴る声で笑う。

動揺の隠せないAに四人の侍女たちは容赦ない。

「まず、衣装が汚れてはいけないから、お化粧からね。顔を拭いて、香油を塗らなくてはね」

がしがしと濡れた布でAの顔を拭く愛藍。

『えっ？....はっ？』

(あーあ)

顔と拭いた布を見比べながら、侍女たちは間抜けに声がそろった。

そのまま口をあんぐり開けて拭き進める。布が汚れすぎて役に立たなくなっているのにも気付かず、四人の侍女たちはAの顔を擦り続ける。

(ばれちゃった、どうしよう...あーあで済む話でもないのよね)

ここでひとつ言っておく。
Aが化粧を嫌がった理由は、化粧が嫌いというわけでない。苦手というわけでもない。
むしろ、得手不得手なら得意といえる。それも、すこぶる。

ならば、なんだといえば、すでに化粧、それもとてつもない厚化粧を済ませた顔だったからである。

表情がわかりにくい理由も化粧が崩れないよう表情筋を固定しているからだ。

皆がすっぴんだと思っていた顔は、実は化粧後の顔だったわけである。

ちなみに、後で衣装に着替える時に服を脱がされ、さらしを取られた後の侍女たちの反応もなかなかのものであったが、それは別の話だ。