映画 短編2 ページ12
そう感傷に浸っていると
「おい、テツ何処か知らね？」という大くんの言葉で意識を戻した。
「あれ、そういえば…。」
見渡すが、それらしき影は見当たらない。
「景虎さんが出ていった直後に居なくなったのだよ。」
そんな真君の言葉に一同は冷や汗を垂らした。
「まさか、あん時と同じパターンかよ/っスか！？」
2人は不良達にバスケ勝負を挑んだいつかの日と同じ既視感を覚えた。
いつも冷静なのにバスケの事になれば話は別、考えるより先に体が動くタイプなのだ。
「アホか！？あいつは！！」
「流石にそれはないっしょ〜。」
「前科があるんスよ！」
「テツならありえるな。」
「だとしたら信じられん奴なのだよ。」
「時々本当に黒子は俺にも予想できないことをするね。」
体育館から全速力で六本木まで向かう私たち。
だがマネージャーである私が選手のみんなに着いていけるわけが無い。
「はぁ…っはぁっ。」
息が途切れて止まる私。
「ごめん、もう走れそうにないから先行っててくれる？後から行くから！」
前を走る皆にそう伝えた。
深く息を吐いて少し呼吸が安定した瞬間、また走り出そうと決意したときに私の体は宙に浮いた。
「はい、ゆりちん高いたかーい。」
「えぇっ！？ちょっと…！」
一気に上がった視界。
いつもとは異なる視点に落ち着かない。
「あ、ずるいっスよ！紫原っち！抜け駆けっス！！」
「え〜、皆がぼやぼやしてるから悪いんでしょ〜？」
「だからって普通するかよ？」
「お…おいお前…それって…お、お姫様抱っこっつーやつじゃ…！」
「ほら、こいつが照れてんぞ。」
「て、照れてねーよ！」
「ありがとう、皆んな…でも私居たら遅くなっちゃうんじゃ…。」
「馬鹿め、お前を置いて行く訳がないだろう。」
「緑間の言う通りだよ、A。もしAがそれを望んだとしても俺らは君を置いていけない。しかも、Aを置いて行ったら黒子も不服だろう？」
「……ありがとう、皆んな。」
煌びやかな照明が辺りを照らしている。
店は華やかな女性たちでいっぱいだ。
初めて見た夜の世界に目を奪われた。
そして辺りを見渡していると目を疑うような光景が目に入ってきたのだった。
「………っ、」
金髪の男性に蹴り飛ばされたテツ君。
「テツ君！大丈夫！？」
「A…さん？」
「てめーらうちの仲間に何してくれてんだよ。」
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作者名：百合 | 作成日時：2017年1月14日 19時
