【ヒプマイ】腐ったマイク【短編集】 (ページ3)

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風邪 part2【帝幻】ページ3

冷えピタを取って寝室に戻ると、幻太郎はまた眠りについていた。

俺が来てなかったら、割と本気で死んでたんじゃないのかと思い、ぞっとした。確かに、寝室まで運ぼうと抱き上げた身体は、いつにもまして軽かったし熱かった。多分脱稿して疲れが出たのだろうと思うけど、そのまま何も食っていなかったんじゃないだろうか。
幻太郎のことだ、十分有り得る。

幻太郎の前髪を掻き分け、額を出した。冷えピタを貼り、そのまま髪を撫でたくなったが、堪えて寝室を出ようとすると。

「...いかな...で...。」

驚いて振り返ると、幻太郎はまだ寝たままだった。寝言か...。ほっと胸を撫で下ろし、台所へと向かった。
おかゆを作ろうと思い立ったのだ。

早速スマホで作り方を調べた。適当な量のご飯を取り、倍の量の水と一緒に鍋に入れ、強火で蓋をして沸騰させる。
で、沸騰したら米をひとかきして、弱火で蓋をして20分程度。この時、蓋は少しずらしておく。タイマーをセットし、ようやく一息ついた。慣れないことをすると肩が凝る。

この間に具とかも作っておこうかと思ったが、失敗する気しかしなかったのでやめた。病人に振る舞う料理での賭けはさすがに出来ない。

タイマーが鳴る。ピッピピッピ煩いそれを止めて、鍋の中を見る。
...これで良いんだよな？
塩を振って味見をすると、普通に食べられる味で安心した。

器に出来上がったおかゆを盛って、寝室へと運ぶ。そっと寝室に入ったら、幻太郎はまだ眠っていた。

おかゆを床に置き、なんとなく痩せたようなその身体を見ていたら、手首の痣が見えた。
...まだ、消えてなかったのか。

一ヶ月程前、酔った勢いで幻太郎を襲った。それから幻太郎の家に泊まる時は、なんとなく身体を重ねることが多くなったのだけれど。

この痣は、きっとその時自分がつけたものだろう。
罪悪感と自己嫌悪で、思わず表情が歪んだ。