第123話 ページ21
「クロードとは、何を話したのか……と、思いましてね。いや、それほど大した事では無いのですが、少し気になって……お客人に迷惑をかけていないか、だけね」
先程の真剣な面持ちからは打って変わって、当主どのは和かに微笑む
だが、何処か捲し立てる様な話し方が気になる
こちらを脅そうとでも、いうのだろうか
それとも……
「クロードさんとは、ルイン様のお話を。ルイン様の事を、もっと知れたらと思いまして」
微笑みながら言うと、当主は安堵した様に、小さく息を吐いた
「そうでしたか。……なら、良かった」
何が良かったのか、それは敢えて聞くまいと口をつぐむ
居心地の悪い沈黙が流れる
「ルインとの縁談は、どうですか。受け入れては、いただけませんかな」
沈黙を破り、笑う当主の顔はどこかぎこちないが、私とルインどのとの縁談には、前向きの様だ
「ありがとう、ございます。……ですが、私でよろしいのですか?……私の身分では、メイザス家の役には、立てないのではないかと」
「そんな事はありませんよ。ルインがAどのに惚れ込んでいる様ですし、それに、結婚とは身分だけで決まる訳ではありません」
途端に饒舌になる当主は、次々と言葉を積み重ねていく
「Aどの、貴女も我がメイザス家に居れば、その身を危険に晒し、誰かを守らなくてもいいのです。それ程上流階級の家ではないが、貴女や、その周りの人を守るくらいの事は出来る」
「私はっ……!」
思わず、声を張り上げてしまった
「私は別に、ずっと護られていたい訳では……無いのです」
その言葉は、先程オビと部屋で交わした、背中を預け合うという約束からだった
一方的に、護られるだけの存在としては、在りたくなかった
だが、この言葉のおかげで、私は一人ではないのだと、オビがいるのだと改めて気づく
不思議と、勇気が湧いてきた
握りしめていた手の指先が、温もりを取り戻す
もう一度手を握り直して、私は前を見据えた
「そもそも、私自身が狙われる事なんて、あるでしょうか」
「は……?」
当主の間の抜けた声が響く
「王子の護衛任務の時には、確かに、狙われる事はあります。……でも、その階級を持たない私の事を、誰かが狙う理由がありませんから」
当主にとっては、このくらいの事は言葉の綾程度で、墓穴にはならないのかもしれない
それは分かっていた
でも、この人が私を狙っている
それだけは、確信に変わっていた
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ななき(プロフ) - 続きが気になり死にそうです!よろしくお願いします!まじで大好きです! (2022年7月8日 17時) (レス) @page21 id: ea7be47ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - じっくりと読ませていただきました。これからの展開がとても気になります!!お忙しいとは思いますが、更新お待ちしています!! (2020年9月16日 5時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - あざかさん» ありがとうございます。長い間の更新停止、すみませんでした。続きも楽しんでいただけるよう、精一杯書かせていただきます! (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ヒロネコさん» 更新が遅くなり、本当に申し訳ないです。今日からまた、ゆっくりと再会していきますので、お楽しみいただければ幸いです。 (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
あざか(プロフ) - すごく面白いです!!!続き、楽しみに待ってます!頑張ってください!! (2018年5月6日 3時) (レス) id: b72f39f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くるみ | 作者ホームページ:
作成日時:2017年8月21日 18時