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第120話 ページ17

「……俺はさ、嬉しかったよ。
 A嬢に直接言われたわけじゃないけど、“背中を預ける”って言われた事が。
 頼ってもらえてるって思った」

「どうして……怖く、ないの?」

オビは苦笑しながら言う

「確かに、怖いよ。俺のせいでA嬢が傷付くかもしれないのは、怖いし辛い。
 でもさ、俺、木々嬢とミツヒデさんが一緒に戦ってるのを何度か見て、思ったんだ。
 人ってさ、ぴったり背中合わせでいられるのって、自分と相方と。二人だけなんだ。
 ……三人じゃ、できない」

オビは両の手の指を人に見立てて、身振り手振りを使って話す

「それってつまりは、さ。
 俺にとって、背中を預けられる相手はA嬢だけで。
 A嬢にとって背中を預けられるのも俺だけ……で。
 ……今はまだ、これは俺の独りよがりに過ぎないことだけど……」

オビはゆっくりと椅子に近づいて、私の背に触れた

そして、耳元で囁く


「あんたの背中は、俺だけのものだろ?」


いつもより低くて、いつも以上に優しい声

ゆっくりと紡がれた言葉は、温もりに包まれていた


ドクリ、心臓がなる音が、自分の中で大きく響く

自惚れでもいいから、今フラれたっていいから

帰ってから、なんて待ってられなくて

溢れ出る涙と、零れる嗚咽と、たった二言


「ありがとう、オビ。……大好き」


この溢れる思いは、どれだけの月日、自分の中に押し込めてきたのか

どんなに固く閉ざしても、どんなに突き放しても、決して消えないこの思い

貴方に伝わったのは、私の思いの中のどれだけか、なんてわからない

安心して漏れた、戯言の様にしか映っていないのかもしれない

それでも、良かった

そんなことがどうでも良く思われるほどの感謝と、愛と、尊敬を

貴方へと、捧げたかった……

でもそれは、たった一言、


“愛してる”


とは、言えなかった理由でもあったのだろうか……









“あんたの背中は、俺だけのものだろ?”


この言葉は、ただ俺の我欲にまみれただけのものだったのかもしれない

A嬢の弱みに付け込むようにして、自分が情けなかった

でも、今俺の腕の中で必死に声を堪えながらむせび泣くA嬢を、守りたかった

彼女の背を、他の誰でもなく、俺が守り、支えたかった

誰かになんて、渡したくなかった


“大好き”


たった一言の、彼女の言葉

その一言を聞いて、俺の中に浮かぶのはんだのは、愛おしさと、愛情と、そして、少しの罪悪感だった……

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ななき(プロフ) - 続きが気になり死にそうです!よろしくお願いします!まじで大好きです! (2022年7月8日 17時) (レス) @page21 id: ea7be47ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - じっくりと読ませていただきました。これからの展開がとても気になります!!お忙しいとは思いますが、更新お待ちしています!! (2020年9月16日 5時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - あざかさん» ありがとうございます。長い間の更新停止、すみませんでした。続きも楽しんでいただけるよう、精一杯書かせていただきます! (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ヒロネコさん» 更新が遅くなり、本当に申し訳ないです。今日からまた、ゆっくりと再会していきますので、お楽しみいただければ幸いです。 (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
あざか(プロフ) - すごく面白いです!!!続き、楽しみに待ってます!頑張ってください!! (2018年5月6日 3時) (レス) id: b72f39f2a6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるみ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年8月21日 18時

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