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第119話 ページ16

「すみません。ルインどのを探しているのですが、何処にいらっしゃるか
 わかりませんか?」

「え?あ、ルイン様はおそらく外に……早くに発たれるお客様もいらっしゃいますので」

突然声をかけられたからか、戸惑いつつも答えてくれる女中さんに私は紙を差し出した

「では、この紙をよかったらルインどのに届けていただけないでしょうか。
 クロードさんに頼まれた、と。」

「は、はい。わかりました」

女中さんは不思議そうな顔をしたが、小さく一礼すると、扉の方へと歩いて行った


「……さて、ルインどのはこれでいいね。問題は……当主様、ですか」

「だね」

隣を歩くオビと話しながら、自分たちに用意された客室へと向かう





部屋の前に着くと、オビと目を合わせてから扉を開けた

何も無いことを確認し、中へ足を踏み入れる

「大丈夫……だね」

「今のところは、ね」

もう一度、ゆっくりと部屋の中を確認する

だが、出たときと変わった所は無かった


「どうするつもり、なんだろうね」

「もう何もして来ないって事を願いたいけど……それは無いだろうしねぇ」

オビの呟きに頷きながら私は椅子に座った


言うか言うまいか、私は少し迷ってから口を開く

「ねぇ、オビ。……今、言うのは間違ってるかもしれないんだけどさ」

「ん?」

「カイトから、伝言を預かってるんだ。カイトが、王城を出るときに。
 オビの負担にならないか、ずっと心配で言えなくて」

「なんて、言ってたんだい?」

「いろいろ誤解しててごめんなさい。そして、助けてくれて、ありがとう。
 長の背中は、頼みました。……って」

「……ふはっ」

オビは吹き出したかと思うと、そのまま笑った

「大役だけど、任せなさいってね」

片目をつむり、穏やかに笑うオビの横顔には不安も、焦りも無かった


「……正直、負担に感じるのは私だったのかも、ね」

「え?……A嬢。……嫌、だった?」

オビの顔から笑みが消えた

「ううん、違う。嫌じゃないよ。……オビが、後ろに居てくれるのは。
 ……でも、ね、不安なの。私の背中を、オビが守ってくれる。
 なら、オビの背中を守るのは、私の役目だ。……だから、それを私の
 力不足で全うできないかもしれないのが、怖いの。」

いつの間にか体は震え、私は俯いていた

それでも、思いは伝えたかった

「私のせいで、オビが居なくなったらって思うと、やっぱり怖いよ」

半ば押し出されて出たその言葉は、互いの心の底へと落ちていった

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ななき(プロフ) - 続きが気になり死にそうです!よろしくお願いします!まじで大好きです! (2022年7月8日 17時) (レス) @page21 id: ea7be47ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - じっくりと読ませていただきました。これからの展開がとても気になります!!お忙しいとは思いますが、更新お待ちしています!! (2020年9月16日 5時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - あざかさん» ありがとうございます。長い間の更新停止、すみませんでした。続きも楽しんでいただけるよう、精一杯書かせていただきます! (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ヒロネコさん» 更新が遅くなり、本当に申し訳ないです。今日からまた、ゆっくりと再会していきますので、お楽しみいただければ幸いです。 (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
あざか(プロフ) - すごく面白いです!!!続き、楽しみに待ってます!頑張ってください!! (2018年5月6日 3時) (レス) id: b72f39f2a6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるみ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年8月21日 18時

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