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第117話 ページ14

「クロードさん」

重苦しい沈黙を破ったのはオビだった

「あんた、夜会の時俺たちにワインを渡しましたよね?」

「……?はい」

「その中に何かが入っている……と、うちのA嬢が言ったんですけど。
 ……心当たりは?」

わざと、挑発的な態度をとるオビ

その真意は私には分からなかった

「何か……ですか?……分かりません」

「……本当に?」

「ええ。……葉月と、A様に誓って」

母様の名前を呼ぶときのクロードさんの目は、僅かに光が強くなる

深く、慕ってくれているのだろう


「では、クロードさん。あのワインは誰が注いだものですか?」

「……分かりません。ですが、あれはメイザス家の当主様に渡されたものです」

「当主、様……ですか?」

「はい。Aどのとオビどのに渡し来るように、と」

オビが疲れたように溜め息をつきながら、髪をかきあげた

「クロードさん、当主の側近はその時傍に居たかい?」

「いえ、居ませんでした」

「その側近はできる奴かい?」

「できる奴?……身のこなしが、ということでしたら、メイザス家に仕える者たちの中では
 一番かと……」

オビが何を危惧していたのかが分かった

そして、おそらくその予想は当たっているだろう、ということも


「オビどの?A様?まさか……」

「……犯人は、メイザス家当主の可能性が高い」

「そんな……」

最後の呟きは声が掠れていて、頭を抱えるクロードさんの目には動揺とうっすら浮かぶ涙しか見えなかった


無理も、無いだろう

母様への罪滅ぼしの為に“大地の魔女”の噂を無くそうと動き回り、やっとの思いで騒ぎが鎮まった

彼の心は軽くなったはずだったのに、ここまで来て、雇い主が“大地の魔女”をまだ狙っていたのだから

きっと、自分の努力は無駄だったとしか思えないのだろう

クロードさんの目の色は、動揺から絶望へと変わろうとしていた



「クロードさん。まだ、そうと決まった訳ではありません。あくまで、可能性の話です。
 それに……貴方は今回、何も悪くない。
 ……私もまだ生きています。まだ自由です。まだ……出来ることはあります」

「A、様……」

クロードさんは驚いた様な顔をしていたが、やがて何かを決意したように頷いた


ふと、膝の上に置いていた手に温もりを感じた

横を向くと、オビが私の手に手を重ねて、微笑んでいた

……やっぱりまだ、オビには敵わないのだろう

そう感じて、私もオビにはにかむ様に微笑み返した

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ななき(プロフ) - 続きが気になり死にそうです!よろしくお願いします!まじで大好きです! (2022年7月8日 17時) (レス) @page21 id: ea7be47ac2 (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - じっくりと読ませていただきました。これからの展開がとても気になります!!お忙しいとは思いますが、更新お待ちしています!! (2020年9月16日 5時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - あざかさん» ありがとうございます。長い間の更新停止、すみませんでした。続きも楽しんでいただけるよう、精一杯書かせていただきます! (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ヒロネコさん» 更新が遅くなり、本当に申し訳ないです。今日からまた、ゆっくりと再会していきますので、お楽しみいただければ幸いです。 (2018年8月29日 22時) (レス) id: cda1da55b6 (このIDを非表示/違反報告)
あざか(プロフ) - すごく面白いです!!!続き、楽しみに待ってます!頑張ってください!! (2018年5月6日 3時) (レス) id: b72f39f2a6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるみ | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年8月21日 18時

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