向日葵の君に ページ7
・
root side
「黄瀬るぅとです。よろしくお願いします」
これも何回目の自己紹介だろう。
元々転勤族だった僕はたくさんの学校を転々としていた。
今回もそのうちのひとつに過ぎないはずなのに、何故か今回は違う気がした。
新しく住む場所へ電車で向かった。
電車の中で"流れる街並みを横目に"思った。
"寂しい(lonely)" "少しだけ(only)"
今まではこんな想いをたくさんしてきた。
寂しいには寂しい。それでも少しだけにすぎない。
それは僕がいつまでも孤独だったから。
"「あいついつも一人じゃん」"
"「あいつと仲良くしてやれよ〜」"
"「やだよ、あんな地味なやつ」"
"「あいつの周りにいると不運になりそう」"
小学生の頃も中学生も、高校に入学したって何も変わらなかった。
地味な僕は地味なまま。息苦しい日々を送っていた。
そんな僕の前に向日葵のような人が現れた。
「よ、よろしくお願いします」
高校2年の春。転校してきた僕の後ろの席に座る彼女。顔立ちがはっきりしていて、一言で言うなら可憐で美しい人。
『よろしく〜、瀬戸内くん』
「黄瀬です」
『あ、そうだった。ごめんね、黄瀬るいくん』
「えっと、るぅとです」
『あれ』
見た目だけだったみたいです。中身はおもしろくて、素敵な方でした。
『人のお名前を覚えるのはどうも苦手でして』
「あ、いや、いいんです…!僕のことなんか覚えてくれなくても!」
『え?覚えるでしょ、黄瀬くん。これからよろしくね』
そんなことを言われたのは初めてで、誰かに名前を覚えてもらえるのがこんなに嬉しいだと思ってもみなかった。
「っ、よろしくお願いします。Aさん」
『うん、よろしくね〜』
少し照れくさい、けれど悪い気はしない。
心地よい春の風が僕の記憶を駆け抜ける。
きっとそれは新たな僕に出会える道標となるように。
37人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
胡桃。(プロフ) - alice roseさん» コメントありがとうございます!文の書き方にはとてもこだわっているのでそう言っていただけると嬉しいです。これからもこの作品をよろしくお願いします! (2021年3月16日 17時) (レス) id: f67a1b0d95 (このIDを非表示/違反報告)
alice rose(プロフ) - 文の書き方がとても素敵で大好きですっ!無理せず更新頑張って下さい♪(●´ω`●) (2021年3月16日 8時) (レス) id: b029b97bf5 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃。(プロフ) - 月風さん» コメントありがとうございます。儚く過ぎ去ってしまうような、花のよう。とても素敵な表現をしていただきありがとうございます!私の表現が月風様に伝わっていて良かったです。これからもこの作品をどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年3月9日 23時) (レス) id: add3e6f906 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃。(プロフ) - バナナくんが尊い!!さん» コメントありがとうございます。神作だなんてとんでもないです!甘酸っぱい青春、切なさなどを感じていただいてとても嬉しい限りです。これからもこの作品をどうぞよろしくお願いいたします。 (2021年3月9日 23時) (レス) id: add3e6f906 (このIDを非表示/違反報告)
月風 - すてきな作品ですね。儚く過ぎ去ってしまうような…花のようでとてもすてきですこれからも無理せず更新がんばってください! (2021年3月9日 22時) (レス) id: 7d237fbbac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:胡桃。 | 作成日時:2021年3月1日 0時