【大正×対称アリス】～all in one～ (ページ11)

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◇序章Ⅰ ページ11

ア「そうか。出口を探すというなら勝手にすればいい。僕はどうでもいい。僕はこのままで構わない。正直、動くのも面倒だ。こうして他人と話すのも嫌で嫌でしょうがない。君が自ら去ってくれるというのなら願ったり叶ったりだ」

『一人で怖くないの？寂しくないの？』

ア「別に」

『私は寂しい』

ア「……君、自分勝手だって言われないか？」

『初めて言われたかな。だって、私には記憶がないもの』

ア「君は人の揚げ足取りが好きだな。記憶を無くす前もさぞや素晴らしい性格をしていたんだろう」

『そうかもしれないし、そうじゃないのかも。でも、貴方相手だったらこれぐらいが丁度いいでしょう？』

ア「神様仏様、古今東西どこぞのマイナーな神様でもいいからお願いです。僕をこの悪夢から目覚めさせて下さい。この人の話を聞かない悪魔からどうか救いたまえ。信じる者は救われるというが、神など信じずとも、崇め立てずとも、貴賤すら問わずに救うのが神だろう」

『一緒に出口を探そう？一人より、二人の方が心強いよ！』

ア「それは君にとってだろう。僕にとっては君はお荷物だという可能性を少しでも考えてみたらどうなんだ」

『そうかもしれない。だけど、貴方をここに放っておけないんだもの』

ア「知っているかな？そういうのは余計なお世話というんだ。親切の押し売りは鬱陶しいだけだ」

『親切じゃなくて、我が儘だよ。私は貴方と一緒にいたい』

ア「君に僅かながらの良心と常識があれば、我が儘は良くないものだと分かるのだがな」

『時と場合に因るんじゃないかな』

ア「……君も本当に懲りないな。ある種の狂気であり、恐怖を感じさせる」

『大丈夫。私は何があっても繋いだ手を離したりしない。ずっと側にいるよ。だから、一緒に行きましょう？』

ア「……手を繋ぐ必要があるのか？」

『ある』

ア「何故？」

『わ』

ア「『私が手を繋ぎたいから』だろう？」

『……そう！』

ア「……くだらない。実にくだらない。僕は運動と無駄が大嫌いなんだ。この二つに共通することが分かるか？『消費』だ。運動は体力を消費させ、無駄は時間の無作為な消費だ。だが、残念なことに時間を有効活用しようと思ったのなら、それなりの代償を払わなければならない。動いている、息をしているということは時間が進んでいるという証拠でもあるからな」