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◆ロベイラ種 4 ページ11

外に出れば、死んでしまうかもしれない。
何か恐ろしい病にかかってしまうかもしれない。そうわかっていても、窓の外に広がる世界に憧れる気持ちは、どうにも止められなかった。だからこそ、私なりにロベイラ種であるという弱点を克服するための努力はしてきたつもりだ。



『最近ではあまり風邪もひかなくなったし。体力だって人並みにはあるわ。ううん、人並み以上かも。世間一般的な「お嬢様」よりも強い自信はあるわよ?』



ザラ「ええ、知っていますとも。……あなたが最近メイドと駆け比べをして勝ったことだって、もちろん知ってます。」



『……えへ。』



知らせるつもりのなかったことまで知られてしまっていた。



……まあ、この塔の中でザラに隠し事が出来るとは思っていないけど。



この塔の管理を、一手に任されている使用人頭が彼なのだ。塔の中で起こったことは、全て彼へと報告されると考えていい。



ザラ「僕も、お嬢様が少々「お嬢様」と呼ぶのには相応しくないんじゃないか、と考えてしまうほどにおてんばなのはよく知っています。ですが、それでもお嬢様はロベイラ種なんですから。」



『……もう。どうしたってそこに戻ってきちゃうのよね。』



ザラ「……ふふ。」



恨めしさをこめての呟きに、ザラはひょいと肩をすくめる動作で応じた。



『別に、ここでの暮らしに不満があるわけじゃないのよ?』



ザラ「ええ、知っていますよ。」



柔らかなトーンでの相槌は、私の我儘を全て包み込んでしまいそうな優しさに満ちている。



……本当に、自分が駄々をこねてる子供みたいに感じちゃうな。



物ごころがついて以来、私はずっとこの塔で暮らしているが、外に出られないということ以外では何の不満も感じたことはない。同じ塔で暮らしているわけではないが、父や兄も、よく私に会いに塔までやってきてくれている。
寂しい思いをさせられたことなんてない。



『……ねえ、ザラ。外に出たいと思ってしまうのは、私の我儘なのかな。』



ザラ「…………。……そうですね。我儘じゃない、と簡単には否定できません。ですが、先ほども言ったでしょう? 僕は、あなたの気持ちもわかるんですよ。」



『……うん。』



ザラ「僕も薬師の端くれですからね。知らないことは知りたいと思ってしまう。だから、あなたが外の世界に惹かれる気持ちをただの我儘だと否定することが出来ないんです。」



『ザラ……。』

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フフカ - はい!まってます今日もご苦労様でした。(^∀^#← (2016年4月13日 5時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ありがとうございます! そうです、前とは少し内容を変えて書いてみました!! よくわかりましたね(^○^) これからも頑張りますので楽しみにしていてください!!! (2016年4月12日 22時) (レス) id: 23fff2c30d (このIDを非表示/違反報告)
フフカ - こんなに遅くからご苦労様です なんとなく今日も来ちゃいました!似ている小説だけど前とは違うので読んでます前より詳しく書いてあるのでとても分かりやすいです(#°∀°♭ 明日もまってまーす(笑) (2016年4月11日 22時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ありがとうございます! 頑張ります(^○^) (2016年4月10日 20時) (レス) id: 23fff2c30d (このIDを非表示/違反報告)
フフカ - 分かりましたありがとうございます誰オチにするか決まったら教えてください これからも毎日応援してます!!ガンバデス (2016年4月10日 19時) (レス) id: eace5f3fac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヒメア | 作成日時:2016年3月9日 20時

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