"ばじけいすけ"【場地圭介】 (ページ17)

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「なんでここに居たんだよ」

「…」

立ち上がれない私の目線に合わせてしゃがみこむ千冬。
なんで、と言われても私だって困る。

「…トイレを出たらあの集団がいて、場地くんを嵌めようって作戦を立ててたのを聞いちゃって。許せなくて動けなくなったの
そしたら居るのに気付かれてここまで連れられちゃった」

「分かりにくい説明だな。オマエもダブったか？」

「これでも説明頑張ったんだけど」

私の返答に気に食わない様子。
これ以上説明しようがないからそう言われても困ってしまう。
頬から垂れる血を優しくティッシュで拭きとってくれる。
ティッシュを持っていることにも若干驚いたが。

傷は浅いがぱっくり切れているため簡単には血は止まらない。
彼は痛々しそうに傷を見つめ、徐に口をひらいた。

「首突っ込むなんてバカだな」

「そりゃ私の可愛い場地くんを締めるなんて話してたらさ」

「まぁ、気持ちはわかるけどよ…」

「私が守らなきゃと思って」

「オマエに守られなくても圧倒的に場地さんの方が強ぇよ」

その通りだ。
私なんかの非力な女に守ってもらわなくても、場地くんは強いから一人で何とかできる。
それでも、守りたかった。

何も出来なくても、怖い思いしても。
千冬や私と楽しそうに勉強する彼の生活を。
お母さんの為に留年しまいと必死に真面目になろうとする彼の気持ちを。
尊重したかったのだ。

「私が守りたかったのは場地くんの気持ちなのかも」

「ハァ…これ場地さんが知ったらなんて」

「言わないで！」

突然の大声に驚いたのか、目を見開いて私を見つめる千冬。
声が大きすぎたのは申し訳ないがそれどころではない。
どうしても、言わないで欲しい。

「は？んでだよ」

「きっと場地くん優しいから怒って殴ってくれる。でもそうしたら守りたくてしたことが意味無くなっちゃう」

そう言うと意図を汲み取ってくれたのか、納得のいかない顔をしながら了承してくれた。
君ならそう言ってくれると思ってたよ。
"場地くんの為"なら。

「はああ……無理すんじゃねえよ」

「ありがとう」

「お前の為じゃねぇから！場地さんの為だからな」

「そこまで言われなくてもわかってるって！」

「とりあえず保健室行って早く授業戻れ」

「千冬も授業参加しなよ」

いつも通りすぎる千冬に笑ってしまった。

何とか動く足をフル稼働させて保健室へと向かう。
この出来事を、恐怖心を場地くんに気付かれないことを祈って。