"ばじけいすけ"【場地圭介】 (ページ16)

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「そいつァオレにもやって欲しいもんだ、なッ！」

「何っ！？」

屋上のドアを蹴り飛ばし、誰かが中へ入ってくる。
とある人に向けて以外には冷たくて乱暴な声。

なんで彼が。どうしてここに。
様々な疑問が頭の中で渦巻いて結論が出てこない。
それでも、見知った顔に安心の涙がボロボロと出てくる。

「ちッ、ふゆぅ…！」

「扉を蹴破っただと！？」

「バケモンかよ…」

「お？オマエ噂の松野千冬じゃねえか」

「うるせぇよ、さっさと退け」

「最近先輩にボコられてガリ勉に助けられたんだって？落ちたもんだな」

「聞こえなかったか？その汚ぇ手と身体退けろっつってんだよ」

面倒くさそうに後頭部を掻きながら先輩たちに悪態をつく。
彼はゴミを見るような目をしていた。

しかし依然として胸部から手を離してくれない目の前の男。
汗を頬に伝わらせながらも、この場を楽しむような表情をしている。
なんだこのゲス野郎。

「何捕まってんだよ変態女」

「うるさい！」

「汚ねぇ、鼻水出てんぞ」

ブハッと吹き出す彼に今は怒りすら感じない。
何よりもこの怖い空間から助け出してくれる千冬を神と認識しそうなほど感謝してる。
彼は先輩に歩み寄る。

「先輩たちの仇、ここで討ってや＿＿」

「ゴチャゴチャうるせぇよ黙って寝てろ」

「は！？アイツが一発？」

赤子の手を捻るようだった。
いとも容易く、目の前の男の顬に蹴りを一発。
漸く私の胸元の圧迫感は消え去り、気持ち悪さから解放される。

「おい、これヤバくないか……？」

「ズラかるぞ！」

「チッ」

取り巻きたちは倒れたやつを引き摺り屋上から出て行く。
田中は憎らしそうに私たちを睨みつけ、逃げていくだけだった。

「おいコラ待てや」

「千冬！もう、いいから」

後を追おうとする千冬を急いで引き留める。
このまま止めなかったら、またあの日のように集団リンチの的になりかねない。

彼は小さく舌打ちをし、着ているブレザーを私に渡した。
破れているシャツを隠すために渡してくれた不器用な優しさを感じる。

「なんで千冬はここに？」

「ココ、おれのサボり場の一つ」

「授業受けなよ……」

「それよりも、だ」

一気に彼の顔に怒気を感じた。
いや、それだけではない。
呆れたような、申し訳なさそうな表情をしている。
何故そんな顔をするのか今の私には到底理解できなかった。