"ばじけいすけ"【場地圭介】 (ページ15)

今日:16 hit、昨日:12 hit、合計:88,388 hit

15** ページ15

「ぐっ」

「あんま舐めてっと、殺すぞ？」

「渡辺ぇ、先輩たちに歯向かわねぇ方が身の為だぞ」

連行されて着いた場所は学校の屋上。
途端に腰を蹴り飛ばされ、倒れたところで前髪を掴み上げ、上を向かされた。
ブチブチと音を立てて千切れそうなほど皮膚が引っ張られる。
痛い、痛い痛い。

痛覚で涙腺が緩み涙の膜を張ると、リーダーと思われる前髪を掴んできた男が舌舐りをした。
余りの気持ち悪さに、自然と一筋の涙が零れる。

「うわっコイツ泣いてやがるよ！」

「さっきまで"手を出さないで〜"とか言ってたくせによォ」

「威勢がいいのは最初だけか？ギャハハ！」

「先輩方。鍵を締めたので好きなようにやってください」

「気が利くなァ田中」

一体私は何をした？
場地くんの事でこうなったなら理解はできる。
だが、これは違う。きっと田中の個人的な恨みによる策略だ。

お前が彼女欲しさに手当り次第告白したのが間違いだっただけだろう。
どうしてそれを振った私のせいにするのか。
分からない。

「どうする？」

「どうもこうもねぇ。手を抑えろ」

乱暴に前髪から手を離されたと思えば、今度は別の男たちが私の手を頭上に拘束した。
リーダー格の男は私の上に跨るように乗る。

ヒュッと喉が鳴った。
これから起きる出来事が容易に想像できたからだ。
ふと目の前の男が、自身の胸ポケットから鋭く光り輝くものをゆっくりと取りだした。

「え、？」

「ヒュー！絶景じゃねぇか」

「やるぅ〜！」

「こういうの久々で興奮してくるぜ」

それが何かを認識する前にシャツを切り裂かれる。
カッターナイフだ。それも大型の。
もしかして、これを場地くんに向けようとしていたのか。
そう考えると私で良かったのかもしれない。

好きな人は、守りたいじゃないか。怖くても逃げたくても止めたくても。
場地くんが毎日勉強して、笑ってくれるならプライスレスだ。
怖いのは変わらないが。

「今からお楽しみなわけだが。何か言いたいことはあるか？」

「ごめ、なさい…でも、場地くんだけは……」

「んな時にもアイツかよ…っ！」

田中も隠し持っていたカッターを私目掛けて振り下ろした。
感情的になったからか運良く焦点はズレ、私の頬を浅く切り込んだ。
じわりと溢れ出る血が、涙の代わりを担ってくれているように思える。

私に跨る男は私を見つめ、笑みを浮かべた。
ああ、気持ち悪い。今すぐ私の胸元にある手を退けてくれ。

「今すぐ楽しくさせてやるよ」