コーヒー時々オムライス

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仕事がひと段落付き、
気が付くと、もうとっくに終業の時間は過ぎていた

同期の萌絵は体調の事を考えて、
すでに時短勤務、
そして、その萌絵の仕事も私が引き受ける

そもそも、最初の育児休暇からの復帰時に、
萌絵の仕事は、家庭と両立するために、
復帰前と比べてかなり軽減されている

まぁ、それを、後輩なり私が担っているというわけだ

「いつかAが育休取るときは、私が助けるから」

なんて、萌絵も言ってくれてるけど、
残念ながら、私にはその縁は程遠いようだった

まぁ・・・
できないことはないし、
その分給料として返ってくるから納得せざるおえない


デスクを片付け、
部長のデスクを見る

そして、
PCをシャットダウンする前に、
課全員のスケジュールを確認する

そして、
その一番上に書かれている

櫻井翔の欄を見ると
15時から取引先へと向かい
そのままNR

「直帰かぁ・・・」

すると、後ろにいた後輩が


「どうしたんですか？」

と声をかける

「ん？」


「今つぶやいていたから」


思わず心の声が漏れてしまったらしく
サーと背中に汗がにじむ

「あ・・いや、部長、直帰だなって」

そう言って、おもむろに、デスクの隅に片付けた書類を手にし。

「今日中に
資料見てもらって、捺印いただきたかったから・・・
仕方ないね、明日にするわ」

そう言ってPCをシャットダウンし

何事も無かったかのように

「あぁ、凪ちゃん？私、今日はこれで帰るけど？
大丈夫？」

「はい、私もこの表だけ作成したら帰ります」

「そ・・気を付けて、じゃあお先に」

平然を装うも
心の中はジワジワと何か後ろめたい気持ちで
おしつぶされそうになった

ロビーのゲートを抜けて、
ビルを後にする


私は、ゆっくりと空を見上げた

外はすっかり暗くなっていて
こんな都会の真ん中で星なんてあるはずもなく
フーっと鼻から息を吐き
歩き出した

朝、カパカパして歩きにくかったパンプスは
今度は、むくんでミッチリときつくなり、
歩くと親指が痛かった

でも、この靴は足を綺麗に見せてくれる

私は痛みを我慢しながら歩いた

途中、「NYkid」の前を通る
店内は明るく、お客も数人いた

その奥のカウンターで、
朝、私を小バカにしたギャルソン男は
真面目な面持ちで、サイフォンと向き合っていた


店内の入り口は閉まっているはずなのに
その香ばしいコーヒーの香りが
この路上まで漂っていた

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