コーヒー時々オムライス

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「Aさん、まだ帰らないんですか？」

帰ろうとする後輩が声をかけてくれる

「あぁ・・うん、雅紀から明日の釜山に持っていく資料頼まれちゃって」


「そうなんですね。というか
Aさん、相葉さんに甘いですよ本当
同期だからって甘やかしすぎです」

「あはは、本当だよね、
でも、まぁ雅紀だけじゃなくて
私断るの下手みたい」


そう、私は誰であっても
断るのが下手なのだ

「確かに萌絵さんの分もAさんが
引き受けちゃってますよね」

「あはは、ほんとだよ、
私の代の同期はどうなってんだって話だよ」

「あまりムリしないでくださいね」

「ありがと
あ・・・でも大丈夫よ
私がいつか結婚して、産休取ることになったら、
倍返しするから」


そう言うと笑った後輩

「あ・・今、
そもそもAさん結婚できるんですか？
って思ったでしょ」

「いえ・・そんな」

「あはは。大丈夫だよ、ほんとに
あ・・・気を付けて帰りなよ
ほら、外なんか雨降りそうだから」


「ありがとうございます、
Aさんも気を付けてくださいね
じゃあ、すいません、お先失礼します」



そう言ってかわいくペコリの頭を下げて帰っていく


とりあえず、
このビルが閉まるまでには、
データ落としておかなきゃ・・・

手元にある資料やタブレットを使いながら、
プレゼン用のパワーポイントを作り上げていく



「お疲れさまです」

と声をかけられる度に
私のPCのキータッチの音が鳴り響く


確かに
私は同期には甘いのかもなぁ

そのうち、
本当に私のキーの音しかしなくなり

私は
思わず顔を上げる


・・・

・・・

誰もいない

1フロア100人を超えるこの空間に
もはや私だけとなり
少しだけ焦る

こなんことは、月に何回もあることで
でもこの状況に慣れることなく
どうしても焦ってしまう

私は部長のデスクの方をみる

部長ももういない・・・

タブレットで、部長のスケジュールを確認する

・・・

「18時エアジェット訪問・・・か」

昨晩の出来事が何も無かったかのようで
少しだけがっかりしてしまう

このまま直帰だな部長

おうちに帰られるのかな・・・
って当たり前か

そう考えるとズキンと心が痛んだ


さっきまで、なりふり構わず
動いていた私の指先が止まる


キーを叩く音も聞こえない

ただただ静寂のフロア


部長には
「ただいま」って言ったら
「おかえり」って迎える人がいる

・・・

・・・

今まで気にしてなかったのに

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