コーヒー時々オムライス

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店先で、キョロキョロを左右を確認し
腰に手を当て
もう片方の手で、頭を掻いたあと
そのままその手を首に回し

正面の私の方を見た


その距離は大体15メートルほどだろうか

私に気が付いた彼は
小走りに駆け寄ってきて

私の目の前で止まり
そして、私を見て

「株式会社ピークパフォーマンス、貿易部門営業1課の
今井Aさん。落とし物です」

と。私の目の前で見慣れたカードホルダーを揺らした


私は、驚いてすぐさまそのカードを手に取る
顔見知りとは言え、個人情報を気にするこの時代

「おっと・・・」

そう言って
彼はそのカードホルダーを上にあげる


「最近多いんだよね、この手」

「どういうことですか？」

私がムッとしてその顔を見ると
ビルの隙間から朝日でまぶしくて、彼の顔が良く見えない

「こうやって、俺に興味を引こうとして
わざと落とし物して印象付ける子」

「まさか」

「しかも、カードだったら、名前も覚えますしね
今井Aさん」

「だから、違います
自意識過剰すぎるし
私から言えば、人の個人情報で遊ばないでくださいます？
いいから返して、じゃないと警察呼びますよ」

「いいですよ、ちょうどよかった
どうやら個人情報を含む大事な拾得物だし」

・・・

「ほんと、遅刻なんです、
急いでいるので返してください」

そう言うと
フと笑った彼は

「どうぞ、もう落とさないでくださいね」

と皮肉めいて私に言った

「ありがとうございます
大変助かりました
それにお店、また列が伸びてるみたいですし
早くお戻りになられた方がいいんじゃないでしょうか」


と、私も負けじと少し嫌味を込めて言う

「そうね、うちは繁盛しまくってるから」

そう言って、私の手にカードを置く

「ありがとうございます、じゃ」


そう言って踵を返すと

後ろから

「あ、さっき入れたコーヒーだけどさ
冷めても、そこそこ旨いよ
香りも味も、申し分ない
なんせ俺が焙煎したやつだからさ
だから、絶対捨てんなよ」

・

よく通うコーヒー店だ
いつもまともに顔も見なければ、
会話ももちろんしたことなくて

でも、コーヒーは確かにその日その日
美味しくて、
私はこのネイキッドのコーヒーを飲むようになってから
社内に設置されているカフェコーナーの
コーヒーを全く飲まなくなった・・

3→←天気のせい

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