追想-TUISOU-１０ Secretな彼女番外編 (ページ37)

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「それで、国境無き医師団にたどりついたわけだ」

「そう、それで、まぁ、就職したら？
例えコネであっても、そんな頻繁に渡航なんて時間ないだろうから、
私はさとみにだけ話したの・・・詳しくじゃないけど、
兄がフランスにいるかもしれない？って
この話を当時の翔に話したらきっとすぐにでも、また
東京に残れって言いかねないから2人だけの秘密ってことで」

「確かに」

あはは
俺は思わず笑う

「というか、その頃すでに俺
言ってたんじゃないかな？
東京で一緒に住もう？ってさ・・・
本当、こうやって聞くと、俺めちゃめちゃ子どもだったわ」

「いや、もちろん
私もそうしたかったよ、
でもね、その時、白黒はっきりさせとかないと、
またいずれこの問題は
あの家の子である限りはつきまとう問題だから」

そう言って少し悲しい目をした
でもすぐに俺を見て話し始める

「それで、さとみとみんなと合流する前に
フランスに来たわけなんだけど、
残念なことに
ここにはもう兄の形跡が何も残って無かった
うーん、正しくは、ここには在籍していたんだけれど
一旦部隊から離れ、違う国に入ったのではないかと」

そう言って唇を噛む

「結局、フランスまで来たのに
兄は行方知れずのまま、それよりもさらに
生きてるのか死んでるのかすら益々わからなくなったのよ」

「・・・そうなの？」

「そう・・・記録が途中で消えてた
こんなことってある？
それで兄がフランスに在籍したときにいた住所を頼りに
たどっていくと、このボルドーにたどりついたってわけ」

そういう事だったのか・・・

「じゃあ、この家は？」

「あぁ、これは違う、
実際兄が暮らしてたのは、
街のアパートメントだったから
ただ何も手がかりになるようなものは無かったの、
それでさとみとこのボルドーを探索して、
その夜はバーで2人でワインを飲んだんだけど
そしたらさ、さとみがこう言ったの
『ボルドーってワイン有名って思ったけど、
私普通に日本のワインの方が好きだわ』って
」

そう言ってクスクス笑う

「日本語だったからよかったけど、
ほんと、大きな声でそう言ったのよ、
でもそのさとみの一言で思いついたの
そっか、
日本では毎年北に北上していかなきゃいけないけれど
ここだったら、できるかもって」

「さとみすげぇな」